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オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その3

【デジタルヲ読ム、読マセル、ト謂フコト~プリントメディアの近未来を語る~】
ディスプレイの大きさ、薄さ、通信速度、の妙がカギ

2010年07月05日 美和晃(電通 電通総研 コミュニケーションラボ チーフリサーチャー)、倉沢鉄也、浅川秀之山浦康史、今井孝之、紅瀬雄太


(美和)そういう意味で、ある程度の大きさの画面を備えた端末がいま出てきたことは、出版社側にとっての大きな助け船だと思うのです。今までつくってきたコンテンツのレイアウトを大幅に変えず、雰囲気を損なわずに配信ができるというのは重要です。しかしそれはあくまでも基礎固めで、次のステップではストレートニュースのように頻繁に更新される情報と作り込んだ雑誌の組み合わせを楽しんでもらうといった読ませ方の工夫もできるようになるのではないかと思っています。

(倉沢)メディアデバイスの画面の大きさについては、長らく電子ペーパーの類が期待されていて、ぜんぜん世に出ませんね。Kindleのようにがっちりした筐体ではなくて、「折ります」「曲げます」が可能な、まさに紙と同じ扱いができるようなものを想定することは難しいのでしょうか。今後20年、30年ではどうなるのでしょうか。

(美和)着々とそういったイノベーションの道筋は見えているようで、20年、30年も待つ必要はたぶんないと思います。プラスティック・ロジックという会社が厚さ4~5mmのディスプレイをプレス公開しています。液晶の陣営でも薄型化が進んでいますし、有機ELディスプレイになったらもっと薄くできるでしょう。

(倉沢)やはりそうですか。テクノロジーは進むとして、新しいデバイスと、「読む」という習慣がどういうタイミングで結びついて、いつ一定規模の市場になるのかが重要ですね。
昔、新聞を電車の中で折りたたんで読んでいた人が、今はしようがないからケータイでテキストニュースを読んでいるが、本当は広げたいよな、というところに答えが出るかに関心があります。

(浅川)携帯電話を肌身離さずにポケットに入れようとしたとき、ディスプレイの大きさの限界は2.5~3インチあたりでしょう。東芝のT-01だと、5インチでは携帯性という点では限界があるかなと思います。肌身離さず持っていることが重要になるコンテンツやアプリケーションも出てくる一方で、ディスプレイサイズの制限があって、どうクリアされるのかは産業側から見ても不透明なままだと思います。3Dあたりが何かを解決するのかもしれません。
その上で、デジタルプリントメディアのビジネスが通信キャリアの領分になるか否かについては、私はネガティブに見ています。やはりモバイルは2.5~3インチぐらいで限界、そこから先は通信キャリアの領分の外だ、という認識でいます。大きさと携帯性のバランスは、通信キャリアの戦略としては悩ましいところではないかと思います。

(美和)通信キャリア目線でポイントになってくるのは、現在の携帯電話端末が想定する3.5インチ程度のハンディな大きさに対して、LTEという次世代通信インフラが“あまりに”高性能になるという可能性があるということです。LTEのサービスを各社がスタートさせたときに、従来の大きさのままの端末でハイビジョン動画が見られますと言って喜びが倍増する人がどれだけいるのか、という議論は内外から出てきてしまうと思います。
そうなったときに、一つの方向性として、一方では従来からのハンドセット型携帯電話自体の大きさは維持し、それはボイス中心のネットワーク端末としながら、他方ではそれとは別の電子リーディング(閲覧用)・デバイスなるものを登場させて、無線連携したり筐体同士が合体したりして、その2つを組み合わせて使ってもらう、というスタイルがあるだろうと思います(注:対談は2009年10月実施。筐体が分割できる機種として、ドコモF-04Bが2010年3月に発売。)。

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