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オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その3

【デジタルヲ読ム、読マセル、ト謂フコト~プリントメディアの近未来を語る~】
「雑誌のような広告」の姿はいかに。ビジネスはいかに

2010年07月20日 美和晃(電通 電通総研 コミュニケーションラボ チーフリサーチャー)、倉沢鉄也、浅川秀之山浦康史、今井孝之、紅瀬雄太


(倉沢)美和さんの冒頭の説明のとおり、雑誌広告は、ある画面の大きさの一覧性と、きれいさと、部数、で訴えかけ、相対的に単価の高い広告であり続けました。それよりも明らかに小さい2.5インチくらいの画面で、中身に集中しようとしている読者に対して、「雑誌のような広告」は紙の雑誌広告と同じロジックで認知理解されるものではないでしょう。
双方向機能があるからクリックとかページビューで何か数字を示せ、ということもなります。ようするに雑誌広告はネット広告の世界に入らざるを得ないわけですが、一方で広告の見られ方において大きく異なる広告媒体である雑誌広告とネット広告は、電子雑誌のビジネスの上ではどう扱われようとしているのですか。

(美和)本音では基本的にデジタルとネットは違うと思いたい(笑)。デジタルコンテンツ配信はそれ自体紙や放送で行ってきたことを代替した技術であって、それが双方向なのかカウンタブルなのかは本質的に関係がないのです、と。

(倉沢)クリックできないデジタルもあるということですね。

(美和)とはいえ、モバイルでも固定網でも、配信しようとすれば、インターネットプロトコルのインフラの上に乗ることは事実なので、紙と同じように仕立てたデジタルコンテンツの広告も、インターネットのロジックを無視して展開することはできません。紙のコンテンツを電子化したときに、広告も紙と同じようにいられるというわけには行きません。双方向性と正確な計測性を持ってしまった広告に対して、広告表現をどうするのか、どういうインターフェイスで広告を見るのか、あるいは広告は楽しむものになるのか、それで実際に広告の商品を買ってくれるのか、買ってくれたのか、といったところまでつなげていかねばならないでしょう。

(倉沢)しかしそれは、手間のかかるものになるというピンチでもあると同時に、雑誌広告を左から右に移しただけの再生産からプラスオンを作るチャンスという見方もできる、ということですか。

(美和)単純な市場の移し変えを超えたチャンスを見つけにいかなければいけないことだけは確かです。

(倉沢)米国ではインターネット上の新聞・出版コンテンツが、当初無料でスタートしたものが有料になっていく流れが顕著です。一般に、無料ビジネスを有料ビジネスにする物言いは2通りあって、最初に無料ですと言っといて、やっぱり今日から未来永劫有料です、と宣言する方法と、最初はキャンペーンです、だからしばらく無料です、正常に戻れば有料です、とする方法があります。
通常後者のほうが大人の戦術としてノーマルなわけですが、広告収入でまかないきれないと読みきるなら、最初からキャンペーンですと言わないと、あとでカネ取れなくなる、ということについての予見は、こうした電子雑誌のビジネスについては、どう考えられているのでしょうか。

(美和)電子雑誌、電子書籍の世界を見渡す限り、倉沢さんの言うようなシナリオを緻密に考えてのビジネスモデル構築まで十分に手が回っているケースはないと思います。言わば行動経済学的に見てどの支払い方がユーザーにとって支払いやすいか、支払っている額は同じにしてもどう口説かれるのがユーザーとして気持ちいいか、というところです。冷静に見て現在のサービスや市場は初期段階ですから、個々の商品について有料課金か広告収入か、はたまた一時的な販売促進キャンペーンか、という議論は生産的ではありません。
ゆくゆくプラットフォームとして一定規模の成長を遂げたときに、ようやく個々の商品の売り方についてバリエーションを考えていく、ということになると思います。

(宮脇)そうなると、さきほどの議論にあったような、出版の世界で完結した専用端末というだけでは、端末も売れないし、ビジネスモデルも先がない、ということですね。

(美和)ですから、先ほどマッシュアップはまだ先だとは言ったのですが、他のテキスト情報の生態系との組み合わせは現実的だと言えます。ひとりの読者・消費者・ユーザーとしてのわたくし個人の理想イメージを申し上げますと、速報ニュースが随時プッシュで配信されてきたり、その掘り下げ記事が読める、さらに雑誌を紙面に近いレイアウトで読めたり、といった付加価値コンテンツ、さらにはその端末から買い物ができる、といったことと組み合わさってくると、数百グラムの端末だから毎日カバンの中に入れておいてもいいか、実はこれはインターネットも見られ、実際にたまには検索もブラウジングもしてみる端末なのだが、このすっきりしたプリントメディア連合体プラットフォームの中を回遊するのがやっぱり面白いなぁ、という話になります。

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