オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その3
【デジタルヲ読ム、読マセル、ト謂フコト~プリントメディアの近未来を語る~】
異業種の会話は、強者からレベルをあわせる必要
2010年06月21日 美和晃(電通 電通総研 コミュニケーションラボ チーフリサーチャー)、倉沢鉄也、浅川秀之、山浦康史、今井孝之、紅瀬雄太
(倉沢)電子書籍については、現在出版社が書籍コンテンツを持ち、少なくとも書籍を作るノウハウがあって、電子書籍がいくばくかのビジネスになる以上は、デジタル世界のプレイヤーも出版業界と会話のレベルをあわせなければいけないのではないかと思うのです。それをパワーに勝るデジタル世界側のプレイヤー側が土足で上がり込んだら、たまたまマスメディア側のパワーも意外に強くてまいった、国民感情もあまり味方してくれなかった、というのがライブドア・フジテレビや楽天・TBSの一連の騒動の一側面だったとも思うのです。
出版業界に対してはデジタル世界のプレイヤーがもはやパワーで圧倒してしまっているのですが、ぜひお利口にビジネスをやってほしいなと思う次第です。ですから先ほどのご指摘のように、Appleが出版社回りを始めている話、かつてはiPod立ち上げのためにジョブス自身が音楽業界をていねいに回ってマージンを決めていった話、などは重要だと思います。他のプレイヤーがただただAppleの事業進出を恐れるのは、適切でないと思うのです。

(紅瀬)日本の電子書籍市場はほとんどマンガ、モバイルに限ってもほとんどがマンガ、それが急成長の実態ですよね。今後出てくる電子書籍端末がマンガをどこまで取り込むかが日本での成功の鍵であると思うのですが。
(美和)よいご指摘です。日本の電子書籍市場が500億円弱だとして、その7割以上はマンガだという事実を忘れてはいけません。電子雑誌の市場はアメリカでも日本でも未知数ですが、日本の場合は、短期的に市場の勢いを得ようとしたらマンガを避けては通れません。現在の日本の電子書籍、ニアリーイコール電子マンガ、と捉えて議論する必要はあります。
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