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オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その4

【ブログパワーは、どこから来てどこへ行くのか】
リアルコマースあってのバーチャルコマース

2010年07月26日 須田 伸(サイバーエージェント コミュニケーションディレクター)、倉沢鉄也、今井孝之


(今井)今伸びているとおっしゃるユーザー課金について、今後の方向性として、リアルワールドの商品、いわゆるeコマースが今後も中心になっていくのか、あるいはアバター販売などバーチャルワールドの商品が伸びて軸足が代わっていくのか、という点についてはどのような展望をお持ちですか。

(須田)いずれの事業者も、現状ではリアル商品で得られた資金の余裕でバーチャルワールドを作って成功している、という構造だと思います。DeNAもスタートはオークションで、のちにSNSをはじめた流れだったと思いますし、ヤフオクも決して取引量が衰退したわけではないです。百貨店が総崩れと言われる中で、楽天は伸びています。facebookもYouTubeも伸びていますが同時にAmazonの取引総額も伸びています。バーチャルのビジネスの伸びは目立ちますが、それに賭けましょうという物言いは、狭い認識に引っ張られすぎかな、と思います。
人間は何のために消費をするかという考えをめぐらせると、やはりリアルの充足あってはじめてバーチャルの充足を得られるのではないかと思います。経済学で言う「高揚」という概念で言えば、バーチャル商品だから20%高揚アップ、リアル商品だから30%高揚ダウン、ということではないと思います。
もちろんバーチャルワールドでも、バーチャルにバーチャルを重ねて、たとえば自分の持っているアバターがペットを飼い、ものを持たせることで感じられる「高揚」がビジネスを形作っている側面は事実としてあります。しかし人間の感じる「高揚」がすべてバーチャルのほうに収れんされていくとは思わないです。

(今井)インターネットのマーケット全体が伸びているという話がまさしくそうなのかなと思います。同じインターネットでも、広告を含めたメディアビジネスと、物販のビジネスではいまだに桁の違う規模で物販のビジネスのほうが大きいですから。その中で、メディアビジネスとしてカウントされているバーチャルのコマースが、伸び率が大きく見えているだけで、リアルのコマースあっての成長だということですね。

(須田)リアルコマースの表現方法が充実してきて、トレンドもわかって、プロや素人のレコメンデーションもついて、対人コミュニケーションという点でリアルの百貨店に消費者が求めていた「高揚」がほとんどすべて代替できてきたので百貨店がピンチになっているという構造だと思います。相対的にeコマースの流通小売パワーが上がっているというだけで、人間の行動の根底にある理由は、実は変わってないのではないかと思います。

(倉沢)それはたとえば、ビジネスマナーとして正式なお詫びは手紙でしなければいけない時代から、電話で謝っても十分にフォーマルな時代になり、今はメールでもフォーマルな時代になり、でも2009年の一般常識としてメールと電話はどちらが深刻な謝り方なのか、というところは、時代によって変わっていくというよりも、受け皿が広がっているのだと思います。同じようにネットショッピングについても、百貨店に行っても感動すれば、バーチャル3D体験でも感動でき、カカクコムでも感動できる、というあたりの幅の広がりが、もともとその感動を独占していたプレイヤーは相対的にへこんでしまった、という解釈が適切なのではないかと思います。

(須田)だいぶ昔ですが、かつては雑誌やカタログを見て買うことに対して「ええっ、写真じゃん!どんな不良品が届くかわかんないよ!」と疑った人は結構なボリュームでいたはずです。品質がよくなり、実際に買って学習していって、買い物上手になりました、あなたも雑誌やカタログで買ってみたらいかが、というプロセスをたどっているはずです。

(倉沢)通販がかつて持っていた胡散臭さが、インターネットのおかげである種ちゃんとせざるを得なくなったという部分もあると思うのです。その延長上で、CtoCのレコメンデーション、その後押しを事業者と広告主が仕掛ける、という仕組みも、時間をかけて広く受け入れられていくと思います。

(須田)そうですね。逆に言えば、今まで消費者にキャパがないことによって、十年一日のように一方的に情報提供していて済んでいたビジネスモデルがシュリンクしつつある、という現実と表裏一体だと思いますね。

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