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オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その4

【ブログパワーは、どこから来てどこへ行くのか】
SNSやミニブログとは、差がなくなっていく

2010年06月14日 須田 伸(サイバーエージェント コミュニケーションディレクター)、倉沢鉄也、今井孝之


(倉沢)ふと気づいたことがあります。
ここまでブログとSNSを同列に論じてきていますが、両者の現時点の本質的な差というのは、ブログ運営側から見てどういうものなのでしょうか。ビジネス面、ユーザー面と、これからの差はすでになくなりつつあるように感じます。SNSでオープンに見せている日記もあります。個人的に体験していないので直感的にわかっていないのかもしれませんが、それぞれのメリットをユーザーはどう感じているのでしょう。

(須田)ブログとSNSの差は、どんどんなくなっていると思います。Mixiもどんどんオープン化に向かっていっていますし、逆にブログのほうでは自分が認めたユーザーにだけしか配信できないエントリーができる機能を提供しています。ブログとSNSの双方が、今までの互いの強味を両方得ようとしているのが現状ですので、必然的にだんだん差はなくなっていくと思います。もともとの出自を生かした戦略を各社とると思いますが、現状の各社の戦略は明らかに同じ方向に向かっていて、統合した市場での、ユーザーの時間と購買行動の奪い合いになろうとしています。

(倉沢)存じ上げなくてすいませんが、ブログでもGREEやモバゲーのような「ゲームからSNS」というアプローチもあるのですか。

(須田)ゲームによるアイテム課金は、アメーバブログの「アメーバピグ」というサービスである程度実現化されつつあります。

(前田)ミニブログはどうでしょうか。今、Twitterが流行しています。ブログのいわば老舗企業アメーバブログとして、Twitterをどう見ていますか。マーケットとして、あるいはユーザーの利用形態として、競合するものなのでしょうか。

(須田)Twitterはこの1年ほどですさまじく一般化したと思います。ただ、今(2009年秋)のTwitterのコミュニティーを見ると、ごく初期のインターネット、ごく初期のブログ、ごく初期のSNS、の雰囲気に似ています。アーリーアダプターの人たちが使っている印象で、そういうものにあこがれ、乗り遅れた人たちがマスコミの特集を見てあわてて参加してきている、という流れだと思います。流れがあるものですから、Yahoo!Japanが興味があると言ってみたり、アメーバブログでもはじめてみたり、といった老舗側のムーブメントになっています。そういうミニブログの運営事業者がたくさん出てくることによって、競争も起こっていくでしょう。その結果、ブログとミニブログ、ミニブログ同士が、ユーザーの時間面でも事業者の売上面でも、競合していくでしょう。ユーザーについては、単にTwitterにハマってブログはやらなくなったという人だけではなくて、両方使い分ける人も出てきています。

(前田)ではこのTwitterブームの要因は何なのでしょう。ブログの魅力と差別化できるなら、それはユーザーの時間も切り分けられていくかもしれません。

(須田)やはり時間つぶしとしては非常に面白いのだと思います。とくに知人、著名人について、「ああ、今ここにいて、こんなことを思っているんだ」というのがケータイからも見られる、フォロー(返事)もすぐできる、ということが魅力なのだと思います。しかしTwitter がこれ以上のブレークスルーを迎えるのかというと、不透明です。
一方で、Twitterブームに対して、何か対抗策を打たねばという切迫感はあります。危機感という表現は、Twitterも含めたブログの市場全体が成長しているから当てはまらないですね。

(倉沢)私が冒頭に申し上げた、景気や年齢・ライフステージでというのは、現在マスメディア側の致命傷としてクローズアップされてきています。すでに日本人の数が減りはじめ、2015年になれば日本の世帯数が減り始め、テレビを愛した団塊世代は20年もすると体の自由が利かなくなってくる年代に入っていく、ということが、視聴人数と視聴率を前提とした広告収入全体をシュリンクさせていきます。これに対して、ブログ、Twitterも含めてインターネットのビジネス全体を縛るマクロ傾向のシュリンクは、まだ私も十分に見て取れないので、しばらく危機感はなくてよいのだと思います。短期的には、この消費不況はさすがのインターネット広告の伸びをも帳消しにするネガティブパワーを持ってはいるようですが。

(須田)単純なつくりのバナー広告やメールマガジンの広告は、全体で見るとすでに停滞傾向にありますが、個別場面ではそれで大きな収益をあげている広告主もいますので、まだインターネット広告全体では市場のシュリンクという場面には遭遇していないですね。未来永劫拡大していくものではなく、後退に向かう「潮の変化」を見極めることは重要だと思いますが、インターネットが持っているビジネスチャンスの余地はまだまだ大きいです。

(山近)Twitterが究極のリアルタイムメディアという状態が現在あります。例えばソフトバンクの新作発表会はYouTubeでリアルタイムに行われます(注:2009年11月公開)。これをTwitterでフォローしはじめると、情報共有のスピードがこれまでになく速くなり、新聞や週刊誌での「新商品発表」というニュースは完全に陳腐化してしまいます。
新聞社や出版社が、Twitterなどのリアルタイムメディアに新たな活路を見いだそうとしている動きはあるのでしょうか。

(須田)実際にありますよ。CNN、ニューヨークタイムズ、日本でも朝日新聞など、Twitterを使いこなそうという試みは続いています。Twitterが進化するとマスメディアがより滅びやすくなるとかという見方ではないと思います。マスメディアの強さは、取材から発信までを専任で携わっているプロの記者の数と質、取材のネットワーク、新聞自体のブランド、豊富な資金、などさまざまにあります。インターネット上の自社サイトを構築し、Twitterも含めて広くメディアをカバーしています。資本関係のあるテレビ局同様、苦しい苦しいといいながらもしたたかな動きを続けているビッグプレイヤーだと思います。

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