オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その4
【ブログパワーは、どこから来てどこへ行くのか】
ブログは文化か、都市か、経済か
2010年06月07日 須田 伸(サイバーエージェント コミュニケーションディレクター)、倉沢鉄也、今井孝之
(倉沢)ブログは文化になったと言ってもよさそうな状態になりました。ブログで起こっていることは人間の普遍的な性質として起こっていることのように思えますが、一方で歴史的に見て欧米の人たちに比べて日本人は自己表現、コミュニティーへの参加、という動機はかつてなかったように思います。このブログが定着したことで、日本人にコミュニティーへの参加という気質が史上初めて芽生え、日本人が根こそぎ変わっていくのか、もともとあった資質が技術の後押しで出現してきたのか、だからこそ利用が頭打ちになってきているのか、そのあたりの解釈に迷っています。

(倉沢)今のTwitterブームの先取りを日本ではもうしていたということですね。
(須田)ただ、日記を一生懸命書く、という習慣は日本人の気質として特徴的だと聞いていますので、多少は日本人の文化と結びついているのかもしれません。強い自己主張ができる人が日本人の中には多くないのかもしれませんが、古今東西を問わず、人間の本質的なモチベーションがあって、そこに簡単なブログやSNSというツールがうまくはまったのではないかなと思います。
(倉沢)都市と地方とブログ、という視点で見るとどうでしょう。やはりIT環境の整備されている都会のほうがアクセスが多かろうという時期もあったと思いますが、もうケータイも含めてそういう時代ではないと思いますので、大都会か地方の街かを問わずコミュニティーの輪は広がっているのでしょうか。
(須田)インターネット利用者はやはり地方よりも都市部のほうが多い、若者が住んでいる地域のほうが多い、という実態はあります。アメーバブログの利用者で見ると、東京、神奈川、大阪などが大きなボリューム層になっていますので、そういう意味では「ブログは都市コミュニティー」と言えなくもないですが、一方で地方の過疎の街の人や、漁村・農村の人たちがブログとeコマースを結びつけることである程度のビジネスボリュームを獲得できていますので、エリアを超えるコミュニティーが形成できていることも見逃すべきでないと思います。その上で、都会でのリアル・コミュニケーションがばらばらになっている状態は久しくありますので、ネットコミュニティーの出現によってもう1回結びつく人と人のつながりもできてきている、とは思います。
(倉沢)ブログとブログユーザーの関わりは、景気で変わっていくのでしょうか。メディア接触というくくりで見ると、かつてテレビはバブル経済期に視聴時間が減りました。

(須田)消費の景気がよくなったときにブログがどうなるかというスタディーはほとんど見たことがないです。事実として、ブログは不景気の中でずっと伸びてきているビジネス分野ではあると思います。2008年のリーマンショックによってブログのエントリー数が減ったわけではなく、爆発的に伸びたというわけもないです。
(倉沢)マクロな景気とともに、個々人のライフステージによって忙しい時代とヒマな時代があると思います。家庭のある女性で言えば、子どもの年齢に応じて大きく波動が出るでしょう。
(須田)ご指摘のように、年齢やライフステージによってブログに割ける時間があるかどうかはかなり重要な要素ですね。発信者の視点で見ると、やはり時間のある人、もしくはそれに対してコミットしようという気持ちがある人が発信していると思います。コミットの度合いが低くても、端的に言って時間的な余裕がある人のほうが軽い気持ちでコミットメントができますよね。
仕事が忙しいステージにある方でブログを熱心にやる方というのは、それなりの強いモチベーションがあるのでしょう。何をさておいてもやるんだ、昼休みが1時間だったら5分もしくは10分をブログに当ててもいい、今日のランチはここに行ってこれ(写真)を食べました、ということを熱心にできる人たちは、確実に一定のボリュームを占めていると思います。
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