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オピニオン メディアビジネスの新・未来地図 その4

【ブログパワーは、どこから来てどこへ行くのか】
広告主はブログを一緒に育ててくれるのか

2010年06月28日 須田 伸(サイバーエージェント コミュニケーションディレクター)、倉沢鉄也、今井孝之、今井孝之


(倉沢)ブログビジネスを支えているのは、これまで論じてきたネタとしてのマス情報とともに、広告主です。広告主は、ブログという媒体には何を求めているのか、広告主のその姿勢は適切なのか、というと大げさですが、ようするに「ブログへのネタ振りは便利だけど、流行っているけど、広告効果は取れるの?ほんとに売れるの?」という広告主の問いに、媒体側としては答えにくいと思うのです。広告主としてつかみどころがないが確実に成長している媒体を、広告主は一緒に育てていこうという雰囲気は、媒体側から感じることはできるのでしょうか。

(須田)中身はあくまでも個人の情報のやりとりですので、効果について広告主への説明しにくさはあります。ただ、言ってしまえば、広告というものは常に役に立っているのか立っていないのか完全にはわからない性質の活動なのです。有名な米国の実業家が、「自分が使っているわが社の広告費の半分は無駄で、半分しか役に立っていない。問題なのは、どっちの半分が役に立たない半分なのかがわからないことが、広告の最大の問題である」と言ったということです。
私は1990年代、広告代理店のCMプランナーという、マスメディアの最たる場所でクリエーターをやっていました。その体験談ですが、少なくともインターネットが広告媒体として本格出現する前までは、プレゼンテーションの場で、ユーザーのターゲット分析の時に居眠りしている広告主の重役も、「では次はCMの説明です」と言うと、がばっと起き出すのです。やはりCMというものに何らかのマジカルな魅力、影響力を認めてくれていて、それを自分の眼と耳で確認したかったからだと思います。それが、おそらく2000年前後から「CMごときに不当な高い金をふっかけている」「このCMでほんとに効くのか」「ウチのCMはスキップされているのではないか」といった広告主の懐疑的な物言いが多くなってきたと思います。現在の現場では、認知や購買の結果が具体的にデータ化できる媒体以外は信用できないという物言いで、より顕著になっていると聞いています。
今、アメーバブログという立場から広告主と話していて思うのは、インターネット広告というものに対して、ほんとに効くのだろうかという怪しい思いもありながら、しかしもうこの媒体は押さえておかねばならない、競合他社やまだ見ぬ異業種参入エックス社に取って代わられるかもしれない、という不安感の払拭としてインターネット広告に力を入れている、真剣に取り組まざるを得ない、ということではないかと思うのです。広告主は、効果の高さ、マス広告の影響力低下、恒常的な予算確保、しかも社内からのコスト圧縮の要請、に全部応えようとしたときに、効率的にユーザーが獲得できる媒体に賭けるしかなくなっているのでしょう。アメーバブログとしてはその効率的なユーザー獲得の場として媒体力を訴求しているわけです。
また広告主の営業部門からは、最終的な購入やブランドロイヤリティの具体的な上昇という点でのROI(Return On Investment)を明確に求められるケースも多いです。ただ、インターネット広告、とくにブログ上での広告の場合は、そこで購買誘引のアクセルを踏みすぎると、「炎上」というおそろしい事態が待っているので、媒体側の説明としては、「やはりブログというものにアクセルとブレーキの両方が必要です」という物言いになりますし、「そのアクセルとブレーキのどのへんのさじ加減がいいだろうか、経験豊富だろうから教えてくださいよ」と広告主に言っていただける。その辺に関しては、確かにブログ運営側としてそれなりのノウハウが貯まっていますので、ギリギリの線を広告主といっしょに作っている、という現状ですね。むちゃくちゃを言われているわけではなく、ギリギリの線で折り合うための要求を、媒体側としてもある程度求めている節があります。媒体側だけではギリギリの線は作れませんので。

(倉沢)なるほど、マスCMであれば、売らんかなのメッセージを詰め込みすぎても、「意味不明になってしまいましたね、次回はもっとシンプルに作りませんか、早く評判を挽回しましょう、ご出稿を」という反省と提案で済みますが、漠とした論評ネタでなく、具体的な認知~購買プロセスでの不満がCtoCの俎上に直接乗ると、「炎上」は確かにこわいですね。

(須田)ブログ運営というビジネスモデルを持続可能なものにするには、そうそうユーザー相手に無茶な商売、詐欺的な商売はできません。ユーザーと一緒に長くやっていきたいのは本心です。ああ、このサービス使ってよかったな、アメーバブログの広告のこのプログラムに乗っかってみて楽しかったな、またそういう機会があったら参加してみよう、と思ってもらえるように仕掛けていかねばなりませんし、そのことを理解してくれる広告主は大事です。そこを曲げて、ユーザーを操作してでも売上が欲しい、という広告主の姿勢は、倉沢さんのおっしゃる表現で言えば、適切ではないので、それはアメーバブログではできません、という物言いを貫いてきているつもりです。ただ、そういうケースはどんどん減ってきていますね。

(倉沢)ユーザーと広告主と媒体の三者で共存していく中で、ユーザーもある種の健全で快適な商売臭さを受け入れ続けていく、というのが最適モデルなのですね。

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