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第2部 パネルディスカッション
「幸福な最期」を選び取るために


 今までは「認知症でもできること」でしたが、これからは「認知症だからこそできること」というポジティブなメッセージを出していきたいと思っています。今まで一生懸命頑張ってきた、生きがい、役割、社会参加。次は、いよいよ「認知症があっても働ける社会」を目指します。次に取り組むのは「就労」です。





 来年の4月にオープンする新しいサービス付き高齢者向け住宅銀木犀は、何と「仕事付きサービス付き高齢者向け住宅」をやってみようということで、高齢者住宅の1階に豚しゃぶ屋さんをオープンします。ここで豚しゃぶを提供するんですが、僕がやりたいのは、デイサービスでも福祉でもなく、「大ヒット豚しゃぶ屋さん」。そこに福祉的要素を付けるだけの話です。大ヒット豚しゃぶ屋さんの店長が、たまたま認知症のある方でも別にいいじゃないですか。そういう高齢者住宅に附帯するレストランを、社会福祉法人恋する豚研究所というところの豚を提供していただいてオープンする予定です。まさに社会保障費に依存しない「稼ぐ高齢者住宅」をつくってみようと考えています。



 今、いろいろ議論がなされているサービス付き高齢者向け住宅ですが、実は、非常にサステナブルな住宅です。「特養・特定施設・サ高住の介護報酬額比較」のグラフをご覧いただくとわかる通り、サービス付き高齢者向け住宅では、介護報酬を目いっぱいまで使わなくても生活ができています。介護報酬を目いっぱい使わなくても、ご自身で自立した生活を継続することが可能なんだ、ということをこのデータが示しているわけです。




 実際、これは我々の高齢者住宅銀木犀〈西新井大師〉のデータです。入居者さんの平均介護度は1.94ぐらいです。おもしろいのは、要介護度5の方もいれば、要介護度1、要支援の方もいらっしゃるということ。要するに、これは社会の縮図なんです。
 でも、従来の高齢者施設だと、どうしても要介護高齢者ばかりが、とくに介護度の重い人たちばかりが集まって暮らしているので、家のなかもシーンとしているし、介護する側の介護士も非常に大変なんです。だから、こうやって重い人もいれば軽い人もいるという状況をつくっていくことが大事だし、実際、介護保険の利用率を見ても、区分支給限度額に対して、要介護度3でも50%ぐらいで何とか皆さん生活できています。サ高住が増えていくと、実は介護費用も下がっていくと思うのです。



 我々が考える豊かな高齢者住宅の定義のなかに、「安心して死んでいける場所」というものがあります。むしろ、看取りまでやらない高齢者住宅はこれから存在意義がないですよ。まさに自然な老衰死を看取っていく高齢者住宅が必要な時代だと考えています。




 「生活の場で看取る文化」を取り戻していくべきだと思うんですね。「最期は医療」、「最期は病院」でという、「神話」ができてしまっていますが、そうではなく、自然に死んでいく。1950年ぐらいまでは自宅で死ぬ人が8割でした。そのときは特別な医療はほとんどやっていなかったんです。そういう死に方を日本人はずっとしてきたんです。それをもう1度取り戻すために、僕らは生活の場での看取り文化を取り戻していきたいです。
 樹木希林さんも「死ぬときぐらい好きにさせてよ」とおっしゃっていましたよね。彼女の亡くなり方は本当にすばらしかったです。そういうことも含めて、やはり「生活の場での看取り」を増やしていかなくちゃいけない。でも、病院で亡くなる人がいまだに7~8割いらっしゃる。最後は救急車を呼んでしまう状況があるのです。



 先ほど申し上げたように、1950年ぐらいは8割の人が自宅で死んでいました。本当に数十年の間に、病院で死ぬというのが当たり前になってしまっただけなんです。だから、これをもう1度戻していくことはできるはずです。でも、本当の自宅で看取っていくというのは、やはりリソースも少なくなっている状況では難しいと思います。だからこそ、高齢者住宅での看取りを増やしていくことが大事だと思うのです。



 生涯医療費の50%以上が、実は、70歳以降に使われているというデータもございます。でも、本当に大切なことは、お金がどれぐらいかかっているかということではなく、その結果、「人々が幸せになっているか」ということだと思うんですね。チューブだらけになったり、時には縛られて最期を迎えていく、ということを本人が本当に望んでいたのだろうか。僕は、誰一人としてそんなことを望んでいる高齢者はいないと考えています。





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