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第2部 パネルディスカッション
「幸福な最期」を選び取るために


(紀伊) 勝又さん、どうもありがとうございます。
 テンミリオンハウスや、支え合いポイントなど、いろいろな取り組みをやっていらっしゃいますね。人と人とがいかにつながりを持ち、それぞれ役割を持って、できるだけ長く暮らしていただけるのかということで、恐らくいろんな施策をやっていらっしゃるかと思います。そのなかで、実際、コミュニティやつながりがうまくできている部分と、これはまだまだ難しいと思っていらっしゃる部分があるかと思います。そのあたりで、とくに市でうまくいっているところと、逆に難しいとお感じになっている課題の部分とを、ご紹介いただけないでしょうか。
(勝又) やはり若い方にどのようにこの活動に入っていただくかというのが大きな課題だと思っています。今日はご紹介できませんでしたが、配食サービスや、地域の体操のグループなど、地域の方が主体となっている活動は非常に多いのですが、皆さん、そのなかの高齢化についてよくおっしゃられます。後継者や担い手をどのようにつくっていくかが大きな課題になっています。
 興味はあっても、ちょっと1歩が出ないという方も多いと思いますので、それをいかに探し出してきて後押しをするか。そこが行政の課題だと思っています。
(紀伊) ありがとうございます。若いということで言うと、先ほど、下河原さんのお話のなかで、駄菓子屋に小学生がくるなど、さらに若い方々が自然と集っているお話があったと思います。下河原さんのところで、コミュニティづくり、地域づくりについて、ここがポイントじゃないかとか、こういうことに気を付けてやっている、ということがあれば、是非教えてください。
(下河原) 「地域包括ケア」という言葉だけで、もうすでに人は寄ってこない感じがしますよね。何か正し過ぎるし、真面目過ぎるし、全然おもしろくなさそう。やはり、若者を集めたり、いろんな人たちを集めたいならば、「おしゃれ」、「格好いい」、「おいしい」、「すてき」とか、もっとわかりやすいキーワードをきちんと製作していかないといけないと思うんですよ。デザインも大事になってきますし、センスもすごく重要になってくる。従来の「地域包括ケア」というスタイルはやめたほうがいいような気がします。すみません。
(勝又) その通りですね。
(紀伊) 私も同感なんですが、逆に、下河原さんのような民間の方から見て、行政には何を期待されますか。
(下河原) 行政のなかだけでやろうとするのではなく、もっと民間に依頼すればいいと思うんです。もちろん、予算の問題もあるとは思うんですが、結果として大きなリターンがあるわけなので、そこはきちんと予算をつくって、センスあるところにお願いしたほうがいいような気がしますね。
(紀伊) 勝又さん、逆に、民間への期待として、どんなことがありますか。民間といっても、介護の事業者だけではなく、介護以外のいろんな生活を支えるサービスの事業者さんもあると思います。
(勝又) 何かサービス、新しい施策を考えるときに、税金を投入して、行政、公的なところがやるべきことなのか、問われていると思っています。確かに人集めも苦労している。「おしゃれでセンスよく」というのは、私どももわかってはいるんですが、なかなか難しいところです。持ち帰って考えていきたいと思います。
(紀伊) いい役割分担ができたらいいのでは、と個人的には思います。
 佐々木先生にもお聞きしたいんですが、先ほどのお話のなかで、「一人でも在宅生活を続けられますよ」というお話がありました。ご家族や、介護サービス、医療サービス以外に、まさに地域の支え合いで暮らしが継続できているという、そんな事例・ケースで印象的なものがあれば、是非ご紹介いただきますでしょうか。
(佐々木) 東京の場合、「地域」という概念が、ちょっとモヤッとしているので難しいところはありますが、例えば私の患者さんで、95歳ぐらいで寝たきりに近い状態の方がいらっしゃいます。元々ブラシの職人さんで、彼女じゃなきゃつくれないブラシがあるらしく、全国から注文がやってくる。そうすると、彼女は、布団の上を粉だらけにしながら、竹に穴をあけてブラシをつくる。
 やはり、注文があるから頑張らなきゃ、私しかできないから頑張らなきゃ、という気持ちが生きがいにつながっているようです。納品のときは、ベッドからおりて、車椅子に乗って玄関まで行って、さあ、どうぞとお渡ししています。
 介護や医療は、どうしてもその人の穴を埋めることばかり考えてしまいますが、やはり、その人なりの強みがあるはずです。その「強みの部分」をより強めることで、その人の生きる力全体を強くしていく。ほかにも例は結構ある気がします。先ほど、紙芝居を読んでいる方のお話もありましたが、その人ができることがあって、その人がいることでコミュニティがどう変わっていくかが、その人たちが実感できるようなことがあれば、それはそれですてきだと思います。
 また、お食事を一人で食べるのはすごく寂しいと思います。僕の患者さんで一人暮らしですと、ヘルパーさんが3度の食事をつくってくれるんですが、つくったら帰ってしまう。そうすると、一人で食べるのはつまらないから、結局、手をつけないんですね。そして、どんどん体重が減っていく。
 そこで、お隣さんも同じような方だったので、「週に2日、一緒に食べたら?」みたいな感じでセッティングをすると、やはり楽しそうに食べるんですね。その人たちに必要なのは、食事をつくってあげる支援というよりは、「誰かと一緒にいられる場をセッティングしてあげる支援」が必要だったのです。一人で隣に行けないとしても、誰かがちょっと手伝ってあげれば行けるかもしれない。一人暮らしの方が二人いても、二人1組にしておけば独居ではなくなります。
 恐らく地域のなかには、そういう、すごくもったいないことをしていることがたくさんあると思うのです。それを行政のような大きな目で見てやろうと思うと、やはりなかなか難しいので、地域のなかのそういう細かいところに気付いた人たちがちょっとずつ、つないでいくことが必要です。「お節介おばさん」という言葉がありますが、そういう地域のコーディネーターみたいな人が何となく機能してくれるといいと思います。民生委員の方もみんな高齢化しているので、なかなかそこまでできない、と思うんですよね。そういった、新しい住民の自治の形のようなものが今後できていけば、自分たち自身にとって住み心地のいいコミュニティになるような気がします。
(紀伊) ありがとうございます。生活を続けていくには、そういう交流や、それぞれが少しずつ支え合うようなところがないと、医療・介護だけでは限界がありますよね。
 角田さんのご相談事例のなかで、「うまく地域の支え合いを活用して、仕事が続けられた」といった事例がもしあればご紹介いただきたいんですが、いかがでしょうか。
(角田) 今のご質問はすごく難しいですね。相談というのは、あまりうまくいってないから受けるので。
 私の父が、今、91歳で一人暮らしをしているんですが、会うたびに、「また○○さんが亡くなったんだよ」、と次々に父の友人や支えてくれたご近所さんが亡くなっていきます。20歳ぐらい若いうちの父の友人は、今でも訪ねてきてくださいます。同世代だけで仲よくしていると非常に危険で、家族だけではなく若い世代のご近所様とつき合ったほうがいいな、と思っています。
 それから、とにかく仕事をしている人は、地域コミュニティと接点がなく、職場と自宅の往復をしています。そんななかで、自分の親に介護が必要になったからといって、突然地域の人に頼ろうと思っても、そんなに世の中は甘くないですよね。それに、先ほど言ったように、親のご近所さんは亡くなっていったり、同じように老いています。やはり民生委員さんや意識の高いボランティアさんなど、お隣さん以外の、そういう人とつながれるように、行政に相談に行くなどして、まずネットワークのなかに親につながってもらう。そこに自分もできる範囲でかかわるというのが現実的かなと思っています。
(紀伊) ありがとうございます。いま、「地域包括ケア」は高齢者だけでなく、子どもや障害のある方も含めた「丸ごと」に概念を広げようとしています。そこを「地域包括ケア」という仰々しい言葉ではなくして、「楽しい」「おしゃれ」「ちょっとした人の役に立つ」みたいなことで、若い方も含めて、皆さんがちょっとずつ自分ごととしてかかわれるような、そんな取り組みが必要なのでは、とお話を聞いていて思いました。
 西沢さん、何かコメントはありますか。
(西沢) 今日は、医療・介護の話が中心ですが、行政の方に期待したいのは、所得の問題ですよね。自分らしく死ぬためには、やはりお金は必要で、銀木犀に入れるのも、恐らく、平均的なサラリーマンか、ちょっとうえぐらいの方だと思うのです。そうでない方はかなりいるので、所得も含めて老後を考えられるのは行政の方しかいないと思うので、そこはすごく期待しているところです。



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