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第2部 パネルディスカッション
「幸福な最期」を選び取るために


(紀伊) それでは、後半のセッションを始めたいと思いますが、その前に、休憩中に質問を多くいただいております。時間の関係で、二つほどご紹介して、お答えいただこうと思います。
 一つ目が下河原さんへのご質問です。「非常に魅力的な事業、住宅であるように感じられますが、同じようにやられていらっしゃる事業者さんが少ないというのは、どういうところに背景があるのでしょうか」というご質問です。
(下河原) 例えば看取りに関して言えば、これは実は経営的にすごくプラスなんですが、そこを見逃してしまっていることがあると思うのです。僕の運営している高齢者住宅の入居率は4年も5年も98%でずっと来ています。それは、やはり看取りをきちっとやっているからということに他ならないと思っていて、要するに、それが経営的メリットなんだ、というところにまで行き着いてない経営者が多いのではないかというのが実感です。
(紀伊) 社会的な必要性に加えて、経営的にもプラスだということは、「シルバーウッドが大変成功していますよ」みたいなことが広まっていくと、経営者の意識も変わっていくのかもしれませんね。
(下河原) あとは、介護職の離職率にも大きく影響していて、看取りをやるというと、「大変だから介護士たちが離れるんじゃないか」と思われるかもしれないですが、逆なんですよね。要するに、彼らの仕事をきっちりつくることが、彼ら自身のアイデンティティを上げていくことにつながるので、そこをもうちょっと理解してもらうために活動していきたいと思います。
(紀伊) ありがとうございます。
 佐々木先生にもたくさん質問が来ているのですが、一つ代表的なものとして、「総合診療医について、これから増えていくのかどうかも含めてどうお考えですか」というご質問です。
(佐々木) 日本は、今、90%以上が専門医ですね。専門医というのは、特定の臓器しか診ないというか、診たくないというお医者さんたちです。でも、高齢者の場合は、一つの臓器しか問題がないという方はいない。心臓の病気を治療していたら、胃に副作用が出ることもあるので、やはり全身を診ることができるお医者さんが高齢者を診ていく必要があります。
 そして、高齢者の割合が増えていくというのは明らかなので、総合的に診られるお医者さんを増やしていかなければいけないという意味で、総合診療医はたくさん必要です。
 それで、総合診療専門医という専門医の資格ができたんですが、実は「地域で高齢者を広く診る」ということをあまり想定していないんです。ドクターGという番組を見たことがある人もいると思いますが、大病院等にいて、「この人の病気はあれじゃないか」みたいなことを臨床推論で出していく。
 全部診られるお医者さんというのは、もちろん、病院にも必要なんですが、地域にそういう機能がないんですね。ヨーロッパの国々では、家庭医が主治医・かかりつけ医として登録をしていて、その人が死ぬまで全部まとめて診るという仕組みがあるんですが、日本にはそういう仕組みがありません。
 そのかわり医師会が提唱しているのは「かかりつけ医」を持ちましょう、ということです。自分の近所の開業医の先生を何でも相談できるお医者さんにして、何かあったら、その人に相談をする。特定の臓器というのではなくて、全部を診てもらう。しかし、日本の開業医の多くは専門医なので「かかりつけ医」の研修事業等をやっています。「2日間研修を受ければよい」というものです。本質的に、超高齢社会に向けて、どうやって「その人の全部を診られるお医者さん」に育てていくかは、これから取り組まなければいけないテーマだと思います。
(紀伊) ありがとうございます。これからの超高齢社会では、そういった「全部が診れる」ことは、医療側としても必要でしょうし、それを国民が受け入れるということも非常に大事なことですね。
 それでは、パートの三つ目に入りたいと思います。ここでは、地域やコミュニティについてどう考えるのか。皆さんとディスカッションをしていきたいと思います。
 背景にはお一人様がどんどん増えていくことがあります。また、経済力として平均的な厚生年金受給者以外の方々を含め、これからの地域づくりをどう考えていくのか。武蔵野市の勝又様にプレゼンテーションいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
(勝又) 武蔵野市健康福祉部高齢者支援課から参りました勝又と申します。どうぞよろしくお願いいたします。



 初めに、武蔵野市の概要です。東京都のほぼ中央に位置し、新宿から電車で20分程度の距離にあります。23区西部、杉並区と練馬区に接し、市内を中央線の吉祥寺駅、三鷹駅、武蔵境駅の3駅と井の頭線の吉祥寺駅があります。吉祥寺は「住みたい街」として上位にランキングしますが、おいでいただいた方には、「緑が多いですね」と言われます。
 人口14万6,146人、世帯数7万6,751世帯で一人暮らしの世帯が多い地域です。



 人口14万6,146人、世帯数7万6,751世帯で一人暮らしの世帯が多い地域です。
 65歳以上の人口が増加しており、高齢化率は22.0%です。資料にはありませんが、75歳以上の方が11.5%、65歳以上の半数は後期高齢者です。
 1世帯当たりの人数がありますが、平成29年で平均1.91人。1世帯二人以下です。独居の高齢者が多く、高齢の夫婦のみ世帯も多くなっています。



 こちらは、最初の課題整理のスライドにもありましたが、国が描く将来像、2025年に向けた地域包括ケアシステムの姿です。本日は資料(P.75)の下の生活支援・介護予防、地域の支え合いについてお話しします。



 武蔵野市では、2000年3月に介護保険条例とともに高齢者福祉総合条例を制定しました。2000年4月から介護保険制度が始まりましたが、市はその前から、「地域のなかでまちぐるみの支え合いをしていく」ことを考え、実践していました。その当時の課題意識としては、「介護保険制度だけでは高齢者の生活の一部しか担えない。高齢者の生活を総合的に支えるまちづくりの目標が必要である」ということです。
 高齢者福祉総合条例の理念として、(1)高齢者の尊厳の尊重、(2)高齢者が住み慣れた地域で安心していきいきと暮らせるまちづくりの推進、(3)自助・共助・公助に基づく役割分担と社会資源の活用、保健・医療・福祉の連携の推進、(4)市民自ら健康で豊かな高齢期を迎えるための努力、の四つを掲げています。当時は「地域包括ケアシステム」という言葉はありませんでしたが、考え方としては同じものです。



 先ほどありましたように、「高齢者福祉サービスの一部分」に介護保険があるという位置付けです。



 武蔵野市では、「地域包括ケアシステム」を市民の方にわかりやすく伝えるために、地域を「まち」、包括を「ぐるみの」、ケアシステムを「支え合いの仕組みづくり」と言いかえて説明しています。市民も、サービス提供事業者も、行政も、一体となって支え合いのまちづくりを進めましょう、というのが基本的な考え方です。



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