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【その2】紙はいつまでも芳しいか ~新聞の今、これから~ 2. 「ニューメディア事業」の教訓は、技術進歩を疑わないこと
2009年03月30日 前田純弘氏 (朝日新聞社 グループ戦略本部 電波セクション 主査)、倉沢鉄也、、紅瀬雄太、西窪洋平
2. 「ニューメディア事業」の教訓は、技術進歩を疑わないこと
(倉沢)技術進歩を読み間違う偏見はいつでもどこでも起きますね。
(前田)インターフェースの技術開発のスピードはものすごく速いですから、私自身も新しいメディアに対して「何だ、こんなの、読むはずない」と言わないようにしようと思っています。そうした歴史も踏まえたデータをご紹介しておきましょう。元データは新聞協会が加盟各社に毎年実施しているアンケートです。
いわゆる「ニューメディア」へ進出した新聞社の数のグラフです。最初はCATVや文字多重放送が出てきて、みんな取り組んできました。電光ニュースというのは山手線や新幹線で見られる、あれです。ビデオテックス(キャプテンシステム)、パソコン通信なども取り組みました。多くの新聞社が新しいメディアが出てくると出資したり、ニュースを流しました。結局、現段階ではインターネットと携帯電話が花開いたというわけです。
(倉沢)新聞社は、これらの媒体に取り組む前に、そもそもラジオやテレビに対して脅威を感じながら出資してきたという経緯もありますよね。
(前田)確かに、歴史的にはそういう側面もあると思います。新聞はいわば一番古いマスメディアですから、ラジオが出てきたら新聞は食われるかもとか、テレビが出てきたときも同じような反応はあったのではないでしょうか。
一方、新しいメディアを運営する側はなるべく見てもらいたい、聴いてもらいたい、アクセスして欲しいとなりますから、毎日変化があるコンテンツとしてニュース、天気予報、株式相場の情報、交通情報、占いなどをそろえるというのがよくあるケースだと思います。現在これだけコンテンツの充実したインターネットの世界でも、ニュースが欲しいというサイトは多いです。
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