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【その2】紙はいつまでも芳しいか ~新聞の今、これから~ 3. 紙という端末ハードウェアの未来は暗い

2009年04月03日 前田純弘氏 (朝日新聞社 グループ戦略本部 電波セクション 主査)、倉沢鉄也、、、紅瀬雄太、西窪洋平


3. 紙という端末ハードウェアの未来は暗い

(倉沢)端末ハードウェアとしての「紙」は確かに芳しくなくて、折りたたみできるような液晶ペーパーに配信される電子新聞、といったものが今後出てきたときに、それが映像も見られるもののはずで、当然インターネット画面も出せるものでしょうから、長らく食卓に出現してきたテレビと新聞のダブルスクリーン(ダブルウインドウ、「ながら視聴」)に変化が起きる可能性があります。
ダブルスクリーンは通常パソコンまたはケータイとテレビの同時利用について言われていますが、電通総研の調査を見るとボリュームゾーンである40代以上、とくに男性で、新聞とテレビのダブルスクリーンが健在であることがわかります。もちろん彼らはパソコンを高度に使いこなしますから、「新聞のようにレイアウトされたテキストコンテンツ」を読む行為は、あと30年くらいは一定のボリュームを保つでしょう。
その端末が紙であり続ければ紙もまたある程度のボリュームを保ち続けることにもなりますが、液晶ペーパーなのか現在流行っている5万円PCなのか、があればテレビと同時にニュース読めるし、出かけても読めるし、ということで紙は必要ない流れはできあがっていくでしょう。

(前田)その、一定のボリュームがどの程度のものなのか、によって芳しい度合いが違いますね。足元の状況では、発行部数は確かにそんなに減っていませんが、2008年になって夕刊をやめる地方紙もいくつか出てきていますし、アメリカでは既にもう紙全体をやめてウェブだけでやりはじめたところもあります。

(倉沢)欧米のトレンドを日本の新聞社からどう見ますか。私からはさっきお話をしたとおり、読まれ方と収益構造から、日本の新聞は欧米の新聞とはちょっと違う見方をしたほうがいいと思っています。欧米から新聞社が参入してくる可能性もないですし、日本の新聞も欧米と同じようにウェブファーストになったり紙が消えたりするのだ、と単純に戦々恐々とするだけでは十分ではないと思います。

(前田)欧米特に米国の場合、ベースはその地域でほぼ寡占の地方紙、言語が英語ということがあって、ウェブで発信することは地域外にリーチするとか世界に読者を持つ、などという言い方で合理化されることが多いようです。実態としてすべての米国地方紙のウェブビジネスがうまく行っているかどうかは、詳らかではないですが。

(西窪)日本と欧米の新聞社の収入構造はやはり違いますから、トレンドに多少の差はあると思います。とくに米国は広告収入の比率がとても高いですから、宅配の購読料収入が過半数を占めている日本のほうが緩やかに変化していく可能性が高い、新聞社の全員が危機感を煽られるほどに変化は急激には起きないのだろうと思って見ています。広告収入の激減は、広告効果に対して広告主が見切り始めている、読者よりも先に広告主が、というところがポイントだと思います。これは構造的な減少で、景気にかかわらず取り戻しがたいものでしょう。販売収入が半分強あって救われているので、時間を稼いで次の手を打たなければならないということだと思います。

(倉沢)そこはテレビ以外の4マス媒体が共通して抱えている問題だと思います。ラジオにも近い話があります。ラジオを聴く人自体は、若者からは絶滅しつつありますがいまだ中高年から根強く聞かれていますし、運転や店舗でのつけっぱなしは接触時間としては一定のボリュームを維持しています。しかしラジオの広告収入はもはや構造的縮小が止まりません。聴きたい人はまだそれなりにいて、ついでに聴かせたい有名タレントあたりもいるのだけれど、ラジオを支える人たちが経済的な理由で先に絶滅してしまう危険を迎えつつあります。新聞も、ちょっとその気配が出てきていると言えます。

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