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【その1】テレビの未来を見据え「ながら。」 ~真説・メディアの同時利用論~ 3. 「メディアバトルロイヤル」という現実と向き合う議論があまりにも少ない

2009年04月03日 井上忠靖氏 (電通総研 コミュニケーション・ラボ チーフ・リサーチャー)、倉沢鉄也、、叶内朋則、紅瀬雄太


3. 「メディアバトルロイヤル」という現実と向き合う議論があまりにも少ない

(井上)電通総研の調査で、「テレビのまわりにメディアがいくつ存在していますか」という問いかけをしてみました。平均で6.12個存在し、平均3.83個をテレビと同時に利用している、と出ました。これはネット調査だったので1位にパソコンが来るのは当然なのですけれども、2位に携帯電話です。それ以外にも、固定電話もある、新聞もある、雑誌もある。単純に競合するメディアだけで平均6個あるという現実を見る必要があります。



(倉沢)テレビのまわりにあっても、テレビの使うシーンと競合するメディアもありますよね。

(井上)そこで、「実際テレビと一緒に何をやったか」と聞くと、パソコンと携帯電話に絞られてきます。10代、20代で見れば圧倒的です。しかし中高年の新聞というのもあなどれないということになります。10代女子の場合、もうテレビはケータイと必ずワンセット、という状態が明白に出ています。テレビが少しでもつまらなくなってくるとあっという間にケータイをいじったり、逆にちょっと面白いネタがあると友達にメール打って話題を共有したり、という行動になっています。つまりケータイを持たないでテレビを見るという状況がほとんどない、ということすら言えます。
この10代女子は昔ながらのドラマ好きで、その最中はどっぷりはまっているのでしょうが、基本的にはみんな友達と話すのが一番楽しいので、一瞬にしてテレビから視線がケータイに映ってしまう、その間も耳では聞いている、ということになるのでしょう。

(倉沢)そんな中で、テレビはつけっぱなしになる、耳で聞いていて、驚いて振り向いて画面を見る、しばらく見させられる、というのが、現在のメディアの実態の中のテレビの姿ですね。つまり目と目はメディア接触で並列できるのです。耳と耳は、よほどの高い情報処理能力を持っている視聴者以外はたぶん同時に使えないのです。

(井上)そういう意味で、テレビCMづくりの現場でされてきた議論の1つに、音の重要さ、という問題があります。音で人をどう振り向かせるか、というところにかなり力を入れています。単純に楽曲タイアップだけでなく、サウンドロゴやジングルのつくりこみについてもずいぶんお金と手間を使っています。このことは広告主側もこういうメディア接触状況を肌感覚でわかっていますので、音づくりには深入りせざるを得ない状態になっていますね。

(倉沢)目で見てない状態からテレビを見せるためには、耳でいくしかないということですね。CM制作時の音声レベルをばらばらにしないというか、ドラマと違って小さい音を作らず拾わず、ということで近い音声レベルにあわせて仕上げられるので、結果として視聴者には大きく音が聞こえるという、ある意味でせこい工夫もするようになっていますね。

(井上)つまりその音のボリュームの大小で気づきをさせて、最初のCMは無理にでも見てもらうという機能を持たせているというところもありますね。

(倉沢)見る側に心地よいものでないのは確かですが、しかしそれが無料でテレビを見られるということなんですよね。

(井上)こういった状況を称して、電通総研ではメディアバトルロイヤルと名づけています。今までメディアミックスという表現が使われることが多かったのですが、これは実は時系列的にミックスする考え方でした。たとえば新聞欄を見て、次にテレビを見て、テレビで紹介されていたプロモーション雑誌を見て、という感じです。これを生活者の視点でもう1回因数分解すると、「バトルロイヤル」というべき状況になっているということです。つまりいろいろなメディアを同時に取り入れるという状況です。この見方で行くと、市場をつかめるビジネスの可能性が見出せてくるのではないか、という気はしています。

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