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【その1】テレビの未来を見据え「ながら。」 ~真説・メディアの同時利用論~  14. 見逃し視聴はユーザーが望むが、ビジネスにできるかが問題

2009年06月26日 井上忠靖氏 (電通総研 コミュニケーション・ラボ チーフ・リサーチャー)、倉沢鉄也、、叶内朋則、紅瀬雄太


14. 見逃し視聴はユーザーが望むが、ビジネスにできるかが問題

(大木)個人的に今後のテレビに期待したいことは、事前に録画予約しなくても、知り合いと話題に出て、話聞いてからその番組を、お金を払ってもいいから見たいということなんです。PCでなくテレビでそういうことができる可能性はありますか。

(倉沢)見逃し視聴ですか。それは既に大容量のハードディスクレコーダーが体現していますよね。1週間分全チャンネルを24時間撮り続けて、捨て続けて、話題になったものだけ見返す、ということは、現在のDVRの商品にはないですが、チューナーを全局分つけてしまえば、あとはPCのカスタマイズで今でも作ることができるはずです。PCメーカーの考えるホームサーバー構想は、まさにそれです。

(井上)YouTubeでの主な見られ方は、一番は音楽のビデオですが、テレビの見逃し視聴のニーズを満たしているところもかなりメジャーです。ただし日本の場合は全部非合法に、公衆送信権の侵害という形で、満たしているというわけです。NHKオンデマンドや、英国BBCのサイトではこれを合法的にやりはじめていますし、韓国もそのニーズが強いようです。最終的には、その局のサイトに行って、課金されるか広告ビジネスモデルを採用するかしたものを見るというのが合法的な理想形ということになります。

(倉沢)問題は、現在それをテレビ局側がやるインセンティブがほとんどないほどに、お金にならないということです。ユーザーのニーズは満たしていても、課金のシステムの運営や輻輳防止のシステム投資で、わずかな課金のビジネスとしてはほとんど利益ゼロだということです。広告を見せたところで、視聴率の話でご説明したように広告取引の条件として増額に見合った効果のあるものにはなりません。ユーザーからも、課金されて見る動画に入った広告は、GyaOの例を見るまでもなく、気持ちいいものではありません。クリックして動画広告を止めてどこかのサイトに飛ぶというのでは、番組を見たくてお金を払った人には本末転倒です。

(叶内)ワンセグで見るCMの効果についてはビジネスでどう取り扱われていますか。ワンセグを使ってみて、ユーザーの利便性はアップしたと思いますが、広告ビジネスとしては何の意味があるのだろうと思ってしまいました。

(宮脇)CMは、一度見て記憶した広告は、あとで音楽だけ、映像だけ、構図だけで何のCMかわかるでしょうから、再想起に役立っていれば十分で、テレビ広告としての取引にはノーカウントではないですか。個人的には私はCM好きだから家でじっくりCM見たいですが。

(倉沢)テレビ広告の再認知は、広告効果としてかなり重要です。だからこそ連続で出したり毎日同じ時間に出したりして刷り込み効果を狙っているし、そのためにGRPという概念で出稿計画を作っているのです。ワンセグでの再想起は、電車のディスプレイでの映像広告と同じ性質のものでしょう。ワンセグが地デジのサイマル放送をやっているうちは、早くおうちに帰って大きな画面といい音で見たいという衝動を駆り立てつつ、どうしても今、横綱の相撲を見たいというときにだけスイッチを入れる道具、緊急用テレビだということです。
その上で、申し訳程度で始まった、ワンセグの独自番組については、外出時の緊急避難ではなくて、単体で見せるということでもなくて、今はテレビとテレビを同時視聴させるという試みですね。私がこの間見たのは、テレ東の深夜番組で漫才をしているところで、ワンセグ側ではテレ東の社長がその漫才を見て論評している番組になっているという、まったくの実験番組でした。

(井上)トライアルとして同様にジャイアンツ戦の延長中継を日テレがやったりしています。独自に広告も入れて、KDDIが冠についたりしました。一方地デジ及びアナログでは21時以降に延長中継を一切やらないで、本来どおりにドラマやバラエティを流しています。制作と送信技術の手間はなかなか大変のようです。
広告効果に関しては、サイマル放送であれば倉沢さんの言うとおりですが、独自放送になったときに何を流すのかがずっと議論されたままです。ワンセグで見ている方々のほとんどが、イヤホンが手元にないという理由で音を消していると思われます。そこで今、データ放送の字幕でCMを見せるアプローチをかなり力入れてやっています。あるいはサイマル放送だとしても、CMで文字を入れるようにすれば、見せ方はあるのではないかという議論になっていますが、定着するかはわかりません。

(倉沢)それこそ、電車の動画広告ですね。ワンセグについては、画面づくりそのものをまだテレビ局が慣れていないです。この大きさで見るような映り込みやカメラワークや色彩調整は、現場でもまだほとんどわからないままです。時間はかかりますが、それはかつて深夜番組で若い製作スタッフが育っていたように、若者が知恵を絞っていくうちに、よいノウハウが出来上がっていくと思います。

(井上)ワンセグについて面白いデータをご紹介します。YouTubeの利用頻度が高い人は、ワンセグの利用頻度も高いのです。それからワンセグへの要望を聞いて見逃し番組を見たいと答えた人は、YouTubeの利用頻度も高いです。
ここから考えると、ワンセグに期待しているのは、先ほど出てきた見逃し再生視聴ではないかという気はしています。もちろんリアルタイムを緊急避難で見たいニーズが大きいですが、リアルタイムの魅力はほんの一瞬ですから、膨大な「ワンセグ非使用時間」に、CDコピーした音楽を聴かないで、見逃したあの番組を見たい、というニーズはあるかもしれません。あとはビジネスとして成り立つかどうかです。逆の発想で、YouTubeをケータイで持ち歩きたいという話も、もう海外のiPhoneでは実現していますし、日本のケータイでもその気になればフルブラウザー機能で見ることができます。定着するかはわかりませんが。
別の調査ですが、ワンセグユーザーは今、二極化しています。1つはテレビが好きな人。もう1つはひまつぶしにザッピングしている人。この人たちは視聴頻度は多いのですが時間は短いです。こういう人たちは見逃し再生視聴に流れる可能性はあると思います。

(倉沢)しかし見逃し再生視聴という機会もまた1日に何度も起きることではないし、人によっては1年で何回も起きることではないですね。

(井上)いや、これはYouTube並みには伸びるかなという気がしていますよ。もともと見ようとしていたものを見逃しちゃった、ではなくて、先ほど話に出ていたように、友達とドラマのシーンのことが話題になって、あるいはお笑いの人のこのネタで盛り上がって、それは私だけが見損ねている、チェックするんだ、という使い方を想定しています。ただし、先ほどからも再三話に出ているとおりで、テレビ局としてどうお金にしていくのかというのが問題で、テレビ局の立場としてはそんなこと考える以前に、面倒くさいことをやりたくない、今は経営状況が厳しいので新しいことやる余力なんてない、というのもまた本音であろうかとは思います。

(倉沢)今の放送ビジネスを崩したくない、崩したとして増収の見込みがあるか、その見込んだ収入をどう配分していくのか、手間をかけて採算がとれるのか、ということでしょう。

本日はどうもありがとうございました。

【完】

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