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適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究事業

2021年04月14日 辻本まりえ齊木大小島明子山崎香織福田隆士、高橋 光進


*本事業は、令和2年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 本事業は、これまでケアマネジメントの分野で培われてきた介護支援専門員の知見を共通化・体系化することで、経験や業務環境などに関わらず、利用者が必要とするケアマネジメントを一定以上の水準で提供できるようにするため手法(「適切なケアマネジメント手法」)の策定を目的としている。
 平成28年度に手法の概念の検討から着手し、令和元年度までに要介護認定の原因疾患としてケアマネジャーが取り扱う可能性が大きい疾患群(脳血管疾患、大腿骨頸部骨折、心疾患、認知症)に着目した想定される支援内容と関連するアセスメント/モニタリング項目の検討・検証を行った。
 「適切なケアマネジメント手法」に関する調査研究事業では、平成28年度から令和2年度までの5か年を「第1期」としてとらえており、令和2年度の本調査研究事業では、1期のまとめとして、これまでに作成した基本ケア及び疾患別ケアの再整理及び改訂版の作成、令和3年度以降の「第2期」からより多くの介護支援専門員に普及・啓発するため方針の検討を目的として実施した。
 
2.事業の主な内容
(1) 基本ケアの充実を軸とした全体的な再整理

 平成28年度に作成した基本ケアについて、今後の普及・浸透を見据え「わかりやすく」かつ「簡潔」にすることを狙いとして再整理を行った。基本ケアの再整理については、ワーキング・グループで集中的に討議を行い、「基本方針」「大項目」「中項目」「想定される支援内容」を整理した。
 基本ケアの再整理を踏まえて、これまで作成した5つの疾患別ケア(脳血管疾患、大腿骨頸部骨折、心疾患、認知症、誤嚥性肺炎の予防)の項目も重複を整理し、「適切なケアマネジメント手法 基本ケア及び疾患別ケア 令和2年度改訂版」を作成した。

(2) 「認知症」検討案及び「誤嚥性肺炎の予防」検討案の活用効果の検証
 「認知症」検討案及び「誤嚥性肺炎の予防」検討案の活用効果の検証を目的として、全国で介護支援専門員を対象とした研修会を開催し、検証データの収集を行った。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、実証研修会はオンライン会議の形式で開催した。
 検証は全国3地域(静岡県、京都府、宮崎県)で呼びかけ、計10回(認知症検討案の検証3回、合計182名)、誤嚥性肺炎の予防検討案の検証5回、合計163名)が参加した。(参加予定者として登録があった人数を記載。)参加者には、当該回の対象とする疾患がある利用者の事例を持参してもらい、演習(個人ワーク)を実施した。
 ※なお、昨年度の調査研究事業では、新型コロナウイルス感染症の影響により認知症検討案の研修会を一部中止した。そのため、本年度事業では、昨年度収集したサンプル(159名分)も合算して分析を行った。

(3) 今後の普及・活用に向けた全体方針の検討
 第2期以降(2021年度以降)の本調査研究事業において、全国的の介護支援専門員に広く活用してもらうための取り組みを行うための展開方策を検討した。本検討は、本調査研究事業と別に実施された「適切なケアマネジメント手法の普及推進に向けた調査研究事業」と連携して行った。
 本手法の普及・活用に向けた、任意研修による早期の展開方策としては、連続研修による普及(個別事例への適用結果の追跡調査を兼ねる形式)の企画・設計を行った。また、介護支援専門員向けの「適切なケアマネジメント手法」の普及資料を作成した。

(4)検討委員会における確認・検討
 有識者や関係団体等と厚生労働省で構成する検討委員会を設置し、上記(1)~(3)の結果について共有および検討を行った。さらに、これまでの調査研究成果も踏まえ、2020年度以降に取り組むべき課題についても議論し整理した。

3.事業の主要な成果
 令和元年度に実施した本事業の主な成果は、基本ケアの充実を軸とした全体的な再整理による「適切なケアマネジメント手法 基本ケア及び疾患別ケア」の作成、今後の普及・活用に向けた検討の2点である。

(1)基本ケアの充実を軸とした全体的な再整理による「適切なケアマネジメント手法 基本ケア及び疾患別ケア 令和2年度改訂版」の作成
 「適切なケアマネジメント手法」に関する調査研究では、平成28年度に手法の概念の検討から着手し、基本ケア及び5つの疾患別ケア(脳血管疾患、大腿骨頸部骨折、心疾患、認知症、誤嚥性肺炎の予防)まで検討を進めてきた。令和2年度の本事業では、平成28年度から令和2年度までの5か年を「第1期」としてとらえ、第1期のまとめとして、これまでに作成した手法について再整理を行った。
 手法の再整理は、今後の普及・浸透を見据え「わかりやすく」かつ「簡潔」にすることをねらいとして、まずは以下を「基本ケアの再整理の方針」と定めて検討を進めた。また、基本ケアの再整理に合わせて本年度までに作成している疾患別ケアの再整理も実施した。
 本手法において、ケアマネジメントの役割は「全体を捉えて生活を整えること」にあるとの考えを前提とし、基本ケアは「生活基盤を整えるための基礎的な視点」ととらえている。したがって、基本ケアは、疾患がない場合でも反対に疾患が多数の場合にも共通する24時間の生活の基盤となる。一方、疾患がある場合は、その種類や時期に応じて、疾患別に特に気をつけるべき視点が疾患別ケアに示されるという構造になる。
 そのため、基本ケアと疾患別ケアに重複する項目は、基本ケアに位置付ける整理とした。ただし、基本ケアと重複する内容であっても、疾患に特有の観点や留意点がある場合には、「基本ケアと重複するが留意して実施」としたうえで、疾患別ケアにも位置付けた。また、本年度の再整理にあたり、今後のシステムへの組み込みにおけるデータベースとしての活用も見込み、①項目の枠組みの名称の統一、②項目内で使用する表記や表現の統一(同一の内容を指す場合には表記を統一)、③アセスメント項目・モニタリング項目の再整理(重複の削除など)も行った。
 上記の結果を「適切なケアマネジメント手法 基本ケア及び疾患別ケア 令和2年度改定版」としてとりまとめた。

 本年度の取りまとめで、第1期で作成した「適切なケアマネジメント手法」の基本ケア及び疾患別ケア(5つの疾患)についての全体的な再整理と改訂が完了した。
 今後、全国的な普及等を見込むのであれば、以下の観点での手法のブラッシュアップが求められる。
○対象とする疾患群の範囲の拡大
○複数の疾患群がある方のケアにおける本手法の活用方法の検討
○疾患以外の高齢者の特徴に着目した手法の検討
○本手法のツール化、システムへの導入による実践的で効率的な活用方法の検討

(2) 今後の普及・活用に向けた検討
 検討委員会およびワーキング・グループでのこれまでの議論では、これまでに第1期に検討してきた「適切なケアマネジメント手法」を普及推進するため、法定研修など、すべての介護支援専門員に周知できるような方法を検討するとともに、まず本手法の展開効果が大きい層への任意研修としての普及推進、および指導者層の育成が必要との方向が示された。
 これらを踏まえ、令和2年度に本調査研究事業と別に実施された「適切なケアマネジメント手法の普及推進に向けた調査研究事業」において、今後の普及推進方策の具体的な検討等を行った。(①連続研修による普及方策の検討及び②介護支援専門員専門員向け「適切なケアマネジメント手法」の普及資料の作成を実施)

 また、第1期に検討を重ね、本年度に再整理を行った適切なケアマネジメント手法は、医学、看護学、薬学、リハビリテーション学、栄養学など、ケアを構成する各領域においてエビデンスが蓄積されている支援内容に基づいて、要介護高齢者の尊厳を保持した生活の継続を支えるため、また自立支援の観点から疾患の再発予防や重症化防止のために有効と考えられる支援内容を、ケアマネジメント実践の実態を踏まえつつ整理したものである。
 したがって、各支援内容は各領域においてはエビデンスが蓄積されている一方で、ケアマネジメントの観点つまり生活全般を捉え、さまざまな領域の支援内容を組み合わせる観点に立ったエビデンス(組み合わせることによる総合的な効果を検証しうるエビデンス)の蓄積は今後の課題となっている。
 適切なケアマネジメント手法の活用によって想定される効果は、「プロセス」、「アウトカム」、「インパクト」の各段階に現れると想定している。本手法の効果を評価するためには、こうした効果に関するデータを収集する必要がある。

4.今後の課題
 これまでの成果も踏まえた検討の結果、今後、本テーマで取り組むべき課題として、(1)適切なケアマンジメント手法の研究(①複数の疾患がある方のケアマネジメントへの対応、②疾患以外の高齢者の特徴に着目したケアマネジメント手法の検討)、(2)全国での活用・普及(①効果的な普及方策の検討、②継続研修による本手法導入の検証、③適切なケアマネジメント手法を活用するためのツールの整備)、(3)長期データ収集による検証、(4)業務への組み込み検討をそれぞれ抽出整理した。
 ※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。

適切なケアマネジメント手法の策定に関する調査研究事業 報告書(PDF:11,140KB)

適切なケアマネジメント手法 基本ケア及び疾患別ケア 令和2年度改訂版(PDF:12,822KB)

概要版(項目一覧)
基本ケア(PDF:1,019KB) / 脳血管疾患Ⅰ期(PDF:807KB) / 脳血管疾患Ⅱ期(PDF:875KB) / 大腿骨頸部骨折Ⅰ期(PDF:602B) / 大腿骨頸部骨折Ⅱ期(PDF:591KB) / 心疾患Ⅰ期(PDF:799KB) / 心疾患Ⅱ期(PDF:827KB) / 認知症(PDF:1,177KB) / 誤嚥性肺炎の予防(PDF:691KB)

【参考】
令和2年度 「適切なケアマネジメント手法の普及推進に向けた調査研究事業」

「適切なケアマネジメント手法」に関する過去の調査研究

平成28年度 「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究事業」

平成29年度 「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究」

平成30年度 「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究」

令和元年度 「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究事業

令和元年度 「適切なケアマネジメント手法の策定や多職種協働マネジメントの展開に向けた実証的な調査研究事業」


本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター コンサルタント 辻本 まりえ
TEL: 080-9673-8693   E-mail: tsujimoto.marie@jri.co.jp
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