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適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究事業

2020年04月10日 辻本まりえ齊木大小島明子山崎香織福田隆士


*本事業は、令和元年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 本事業は、ケアマネジメントの質の向上を目的とし、ケアマネジャーが把握しておくべき知見の平準化と多職種協働の推進をねらいとしている。平成28年度に適切なケアマネジメント手法の策定に向けた検討に着手し、平成30年度までに要介護認定の原因疾患としてケアマネジャーが取り扱う可能性が大きい疾患群(脳血管疾患、大腿骨頸部骨折、心疾患、認知症)に着目した想定される支援内容と関連するアセスメント/モニタリング項目の検討・検証を行った。
 令和元年度の調査研究においては、平成28、29、30年度に実施された検討内容も踏まえ、本事業における「適切なケアマネジメント」の考え方の取りまとめ、平成30年度検討案(認知症)の活用効果の検証、新たな疾患群(誤嚥性肺炎の予防)における検討案の作成、他の職種と協働する場面での活用に向けた「多職種協働推進プログラム」の企画・検討を行った。

2.事業の主な内容
(1)「適切なケアマネジメント」の考え方の取りまとめ
 「適切なケアマネジメント手法」の今後の普及展開を見据え、平成28年度からの検討を踏まえ、本事業における「適切なケアマネジメント」の考え方を取りまとめた。具体的には、ワーキング・グループにて検討案を作成後、検討委員会等においてブラッシュアップを進めた。

(2)平成30年度検討案(認知症)の活用効果の検証
 平成29年度検討案(認知症)の妥当性の確認と修正すべき点の洗い出しを目的として、全国で現任のケアマネジャーを対象とした研修会を開催し、検証データを収集した。検証は全国4カ所で計4回実施し、合計159名が参加した。参加者には、認知症がある利用者の事例を持参してもらい、演習(個人ワーク)を通じた検証を実施した。
※本事業では、当初、平成30年度事業において作成した「認知症」の検討案の修正(成案化)を目指していたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の感染拡大に伴う会議体開催自粛等の影響により、予定していた実証検証会をすべて実施することができず、十分なサンプルを回収することができなかった。そのため、検討委員会の判断で本事業では、実証を実施できた検証データの分析までを実施し、検討案の修正(成案化)は来年度の実施事項とした。

(3)新たな疾患群(誤嚥性肺炎の予防)の検討案の作成
 本年度の検討では、対象となる高齢者の数が多く、入院のリスクあるいは重症化した場合の死亡リスクが高いという観点から「誤嚥性肺炎の予防」を選んで検討を行った。既存の医療および介護の各領域における、誤嚥性肺炎の予防および療養、ケアおよびケアマネジメントに関するガイドラインや文献を収集・整理したうえで、ケアマネジメントの実践者で構成されるワーキング・グループでの検討、ワーキング・グループアドバイザーや検討委員会での助言や意見を踏まえて検討案を作成した。

 なお、本年度取りまとめたものはあくまでも検討案であり、今後さらにケアマネジメント実践での検証や有識者等による議論を踏まえてブラッシュアップしていく予定である。

(4)多職種協働推進プログラムの企画・検討
 多職種協働での「適切なケアマネジメント手法」の活用に向け「多職種協働プログラム」の検討を行った。本事業では、多職種協働の場面において「適切なケアマネジメント手法」に期待できる効果、具体的な導入場面等の検討を行った。

(5)検討委員会における確認・検討
 有識者や関係団体等と厚生労働省で構成する検討委員会を設置し、上記(1)~(4)の結果について共有および検討を行った。さらに、これまでの調査研究成果も踏まえ、2020年度以降に取り組むべき課題についても議論し整理した。

3.事業の主要な成果
 令和元年度に実施した本事業の主な成果は、「適切なケアマネジメント」の考え方の取りまとめ、新たな疾患群として「誤嚥性肺炎の予防」の検討案の作成、多職種協働推進プログラムの企画・検討の3点である。

(1)「適切なケアマネジメント」の考え方の取りまとめ
 2016年度から開始した「適切なケアマネジメント手法に関する調査研究」では、①ケアマネジメントの実践知(特に支援内容の知識を根拠にもとづいて整理し共有できるような体形化)、②疾患群ごとのアプローチ、③多職種連携の円滑化に向けた工夫について、検討を重ねてきた。
 本事業では「適切なケアマネジメント」の考え方として、ケアマネジメントは以下の4つを目指して行うものと示した。
 ○尊厳を保持し、質の高い生活を実現する
 ○将来にわたるQOLを維持・向上させるマネジメント
 ○セルフケアへの移行を見据えたマネジメント
 ○資源の充実
 これらの目指すべき「適切なケアマネジメント」を実現するために、①情報を収集し、状況を分析し、見通しを立てること、②地域の実情に応じて社会資源をコーディネートすること、③意思の形成・表出・決定・実行を支援することの3つの機能が必要である。また、こういった適切なケアマネジメントを実現するための方法や、保険者(自治体)に期待される役割についても取りまとめた。
 前述の考え方を踏まえて「適切なケアマネジメント」が実施されることにより、ケアマネジメントプロセス(アセスメント~モニタリング)が共有化され、質の向上による自立支援の推進や業務の効率化も期待できる。

(2)新たな疾患群(誤嚥性肺炎の予防)における検討案の作成
 誤嚥性肺炎の予防のためのケアマネジメントの基本的な考え方として、誤嚥性肺炎の特徴や、誤嚥性肺炎の予防のためのケアマネジメントにおいて留意すべきことを取りまとめた。 
 誤嚥性肺炎の予防のためのケアマネジメントにおいては、具体的な情報に基づくリスク評価を踏まえて、その人にとって必要なケアや環境の改善を実現できるようにコーディネートすることが求められる。リスク評価とその結果を踏まえた対応策は、その人の普段の健康状態や生活状態、食事の様子など具体的な状況に基づいて決まるため、その人の普段の状態の変化を捉えることも重要になる。
 こうした考え方を踏まえ、誤嚥性肺炎の予防のためのケアマネジメントにおけるアセスメント/モニタリング標準化、つまり誤嚥性肺炎の予防のためのケアマネジメントにおいて「想定される支援」として仮説を持ってその必要性を情報収集・分析すべき事項の一覧とその整理結果を取りまとめた。なお、本案はあくまでも検討案であり、今後検証を重ねて成案化する必要がある。

(3)多職種協働推進プログラムの企画・検討
 ケアマネジメントの役割とは、高齢者およびその家族が目指す生活の実現に向けて、生活全般を捉え、将来の生活予測に基づいて情報収集・分析と支援の調整、本人や家族に対するサポートを行うことである。したがって、介護支援専門員一人で行えるものではなく、チームとして対応する必要がある。チームでの対応にあたり、「適切なケアマネジメント手法」を“共通言語”として活用することで、①アセスメントやモニタリング段階での効率的な情報収集、②利用者のエンパワメントに資する支援内容の検討の2つの効果が期待される。
 本事業では、多職種協働推進プログラムにおけるシーン設定として、介護支援専門員と複数の多職種が一堂に会して情報共有を行う場面である「退院時カンファレンス」に着目した。退院時カンファレンスにおいて「適切なケアマネジメント手法」を活用するためにはある程度の知識と経験が求められる。そのため多職種協働推進プログラムでは、まずは中堅・リーダー層の介護支援専門員を対象と想定した。今後、モデル地域での実証検証や多職種協働での活用場面の検討、多職種協働に関する指導等への活用を検討する必要がある。

4.今後の課題
 これまでの成果も踏まえた検討の結果、「ニッポン一億総活躍プラン」で2026年度までとされる本テーマで取り組むべき今後の長期的課題として、(1)現場での活用に向けた取り組み、(2)手法の周知・啓発のための取り組み、(3)手法の活用によるエビデンスの蓄積、(4)他の疾患群での開発の4点を、当面取り組むべき短期的課題として(1)これまでに作成した疾患群別標準化項目再整理、(2)研修等の実施方法の検討、(3)長期データ収集に向けた方法論の検討の3点をそれぞれ抽出整理した。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。

・適切なケアマネジメント手法の策定に関する調査研究事業 報告書 
  本編(PDF:2,502KB)巻末資料(PDF:3,364KB)

・ケアマネジメントにおけるアセスメント/モニタリング標準化「誤嚥性肺炎の予防」のためのケア【検討案】
  本編【検討案】(PDF:2,807KB)項目一覧【検討案】(PDF:604KB)


【参考】(平成30年度調査研究事業 報告書)
・ケアマネジメントにおけるアセスメント/モニタリング標準化「認知症」がある方のケア【検討案】 
  本編【検討案】(PDF:2,780KB)項目一覧【検討案】(PDF:540KB)

・ケアマネジメントにおけるアセスメント/モニタリング標準化「心疾患」がある方のケア 
  本編(PDF:3,201KB)項目一覧(PDF:671KB)

【参考】(平成29年度調査研究事業 報告書)
・ケアマネジメントにおけるアセスメント/モニタリング標準化「脳血管疾患及び大腿骨頸部骨折」がある方のケア 
  本編(PDF:71KB)項目一覧(PDF:2,579KB)


本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター コンサルタント 辻本 まりえ
TEL:03-6833-8761   E-mail:tsujimoto.marie@jri.co.jp
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