急速な進化を遂げるAI技術の中でも特に注目を集めているのが「AIエージェント」である。AIエージェントとは、周囲の環境やコンテキストを自ら把握し、明確な目標に向かって自律的に行動を計画・意思決定し、タスクを遂行できるAIを指す。その最大の特徴は「高い自律性」であり、人間が細かな指示や介入を行わなくとも目標達成が可能である。AIエージェントの普及が進むと、AIが自律的に経済活動を行い、「顧客」として市場に参加するという新たな時代が訪れる可能性がある。
本レポートでは、AIの顧客化がすでに具体的な形で表れつつある4つの領域―「検索/調査」「デジタルコマース(EC購買)」「旅行・観光」「サプライチェーン交渉」―に焦点を当て、それぞれの領域でのビジネスへの具体的な影響と企業が取るべき対応策について検討を行う。例えば、「検索/調査」では、情報収集をAIエージェントが自律的に進める事例が現れており、企業はAIに向けてコンテンツを最適化していくことが求められる。
企業がAIの顧客化に向けて準備すべき重要なポイントとして、次の3つが挙げられる。
• 自社コンテンツや商品データをAI向けに最適化すること
• AIプラットフォーム提供企業との戦略的コンテンツ提携を進めること
• 自社内で垂直統合型AIエージェントを積極的に活用し、市場の変化に備えること
AIの顧客化の動きは「垂直型」(特定のプラットフォームに垂直統合されたエージェント)および「水平型」(水平的に複数の外部リソースを利用するエージェント)の両タイプのAIエージェントで同様に進む。長期的には、消費者が最初に触れるインターフェースがAIとなる「AIファースト」の社会が訪れると予測する。このような社会では、AIエージェントが消費者に代わって購買や意思決定を行う機会が増加するため、消費者との関係構築や市場へのアプローチ方法も大きく変革していくものと思われる。
本レポートが、到来するAIエージェント時代に向けて、企業が自らの顧客戦略を再検討し、ビジネスモデルを構築していく上での一助となれば幸いである。
▼目次
- 現状認識
- AIエージェントの現状
- AIエージェントの具体例
- マシンカスタマーとAIエージェント
- AIエージェントの顧客化: 兆候が表れている領域
- 事例・予測
- 「検索/調査」、「デジタルコマース(EC購買)」、「旅行・観光」、「サプライチェーン交渉」
- AIエージェントと支払い
- Insight
- 垂直型AIエージェントと水平型AIエージェント
- 企業が取り得る戦略(サマリ)
- AIエージェントの顧客化における今後の展望
- AIエージェントの顧客化に関するリスク・課題
▼執筆者
先端技術ラボ 渡邊大喜
先端技術ラボ 大沼俊輔
先端技術ラボ 渡邊大喜
専門領域
先端技術リサーチ
ブロックチェーンを中心に、デジタルウォレットやゼロ知識証明に関する先端技術のリサーチ業務に従事。調査レポートの執筆や専門誌への寄稿の他、長年の企業での応用研究の経験を元に、ビジネス活用を見据えた独自技術の創出にも注力。
先端技術ラボ 大沼俊輔
専門領域
先端技術リサーチ
自然言語処理やマルチモーダルAIの調査・技術検証を中心に活動。
■ 本件に関する取材依頼等のご相談に関しましては、こちらのフォームよりご連絡ください。ご連絡の際に、本件のタイトルを件名、または問い合わせ内容にご記載いただきますと、ご案内がスムーズです。