先端技術リサーチ
生成AIの台頭で大きく注目されるAIガバナンス ~欧米のAI・デジタル動向の考察と示唆~ 【後編】
2025年04月10日 先端技術ラボ 田谷洋一、株式会社三井住友フィナンシャルグループ シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ 緒方雄二
近年、グローバルにAIの社会実装が進み、様々な業界におけるAI活用が進んでいる。日本国内でも生成AIの利用に向けた議論がなされているが、実際の利用率や検討状況などを見ると、わが国でAI活用が大きく進展しているとは言い難い。
日本企業がAI導入を進める際の障壁として挙げられるのは、AIのリスク管理やプライバシー保護等のガバナンス施策の推進である。AIは様々な領域での活用が期待される反面、安全性や信頼性など、AIが社会に与える影響を多角的に検証することも併せて求められており、組織が部門横断的に施策や戦略を立案する重要性が指摘されている。
AI実装で先行する欧米ではAI法規制の整備が進みつつある。欧州では産業横断的に厳格なAIリスク管理を行う法規制が採択された一方、米国では産業の特性に応じて、より効果的なガバナンスの整備とイノベーションの促進を実現するための政策がとられている。
欧米においても法規制の整備は発展途上の段階であるため、現時点でAI施策を評価するのは時期尚早である。しかし、過去のデジタル進展を振り返ると、米国ではイノベーションとともに大きな経済成長がもたらされた事例も多く、AIのリスクを適切にコントロールしながら、イノベーションを強く促す方法を模索することはAIの発展においても有効だと考えられる。
本稿では、AIを取り巻く近年の動向や問題意識に基づき、主にリスクやガバナンス戦略をテーマに、日本企業がAI活用を一層進めるためのヒントを模索していく。なお、本稿は、前編・後編の2部構成であり、後編では前編(https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=108778)で整理した内容を基に、主に米国の事例や政策などの紹介を中心に、企業に求められるAIガバナンスの要素と日本のAI活用の進展に向けた考察をする。
▼目次
- 前編の振り返りと後編の内容について
- グローバルに活用が進むAIと求められるガバナンス整備
- AIの社会実装とともに重要性を増す法規制・ガバナンスの整備
- トランプがAIの安全利用に関する大統領令を撤回
- 金融機関で拡大するAI活用
- 米国金融機関のAI施策(AI倫理、透明性、安全性の確保)
- 米国金融機関のAI施策(データ整備やデータ保護対策)
- 米国金融機関のAI施策(AI人材の強化)
- グローバル企業のAI施策(AI管理体制の強化)
- グローバル企業のAI施策(AIセキュリティの強化)
- 企業が取り組むべきAIガバナンス施策
- まとめ
- AIガバナンスの強化はグローバル企業にとっての優先事項
- 先進事例を参考にAIガバナンス施策への着手・推進を
- 慎重な姿勢が続く日本のAI政策
- イノベーションとガバナンスの両立を実現する効果的なAI政策を
- まとめ
- 前編・後編(1章から4章)のまとめ
はじめに
第3章 AI実装が進む米国の動向とAIガバナンス施策に取り組む企業の先進事例
第4章 日本企業がAI活用を進めるために ー企業に求められるAIガバナンス態勢の整備と企業をサポートする政策の立案をー
総括
▼執筆者
先端技術ラボ 田谷洋一
(共著者)
株式会社三井住友フィナンシャルグループ シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ 緒方雄二
先端技術ラボ 田谷洋一
専門領域
受賞歴
シリコンバレー・デジタルイノベーションラボに駐在。欧米の先進デジタル動向について調査・発信している。
Plug and Play「シリコンバレーサミットJUNE2023」Corporate Innovation Award
(共著者)
株式会社三井住友フィナンシャルグループ シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ 緒方雄二
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