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ビューポイント No.2025-033

【自律協生社会シリーズ⑦~衆院選後の高市政権に望む】
強く豊かな経済に向けて~外交、経済 財政運営、構造改革の観点から

2026年02月13日 石川智久西岡慎一蜂屋勝弘瀧口信一郎山崎新太佐藤悠太


今般、政府与党が衆議院選挙において圧勝することとなった。国民から大きな支持を受けて政権基盤が安定するなか、改革をスピードアップして強く豊かな経済を実現することを期待する。その際重要なことは、まず、外交面では国際情勢を踏まえたうえで、日本に有利な貿易・投資関係を構築することである。内政面では、財政が厳しい状況となるなか、バラマキではなく、必要な部分に的を絞った財政運営を行うと同時に、必要な改革が遅れることはないようにすべきである。その観点から、今後の最重要課題は、①小資源・貿易投資立国日本における強力な外交・通商展開、②責任ある財政運営に重要となるインフレ抑制と財政規律、③持続的経済成長の実現に不可欠な構造改革への取組であると考える。以下の観点から政策を進めるべきである。

1.世界の情勢変化を踏まえた外交戦略
国際情勢は日々大きく変化している。日本としては安定的な外交関係の構築は政策運営の大前提である。新政権においては、日米同盟を基軸にしつつも、中国との関係改善に努め、さらに近年人々の関心が高まっているミドルパワー諸国やグローバルサウスとの連携を急ぐべきである。貿易や投資国の多角化を進めると同時に、こうした国々から日本への投資を増やす政策も進め、国内の供給力を高めていく必要があろう。さらに、レアアースについても調達先の多角化を進めることが喫緊の課題であり、早急に対応を進めるべきである。

2.インフレ下における適切な財政・金融政策
新政権は、「インフレの構造的な抑制」を日銀との共通課題として認識し、インフレ下における適切な財政・金融政策を推進すべきである。日銀には、市場との丁寧な対話を通じて政策の透明性を高め、金融政策の正常化を適切なペースで進めることを期待する。

新政権は、責任ある政策運営に不可欠な財政規律の向上に向け、政府と与党が連携しながら、独立財政機関の具体案などを提示すべきである。さらに、政策の軸足を需要刺激から供給力強化に移し、その実効性を高める観点から、重点分野の官民投資を多年度で管理できるよう予算制度改革を進めるべきである。

3.持続可能で効果的な社会保障政策
人口減少に歯止めがかからないなか、社会保障制度の持続可能性を高めるには、給付に係る負担を国民全体で能力に応じて広く分け合う必要がある。社会保障財源は、現役世代に負担を偏らせることなく、資産を含む応能負担と高齢者にも一定の負担が及ぶ消費税で確保すべきである。今後創設される国民会議において、社会保障財源確保の方策についてもしっかり議論し結論を得るべきである。

選挙公約にあった物価対策としての消費税減税は、財政規律を損ない、将来世代へ現在負担を転嫁する結果となる。新政権の下、消費税減税は実施したとしても厳に時限措置とし、物価対策は、可処分所得の引上げ、高コスト構造の改革、給付付き税額控除で対応することが望ましい。

給付付き税額控除は、バラマキを回避し、ワーキングプア等の低所得者への給付を充実させるための重要な手段である。その機能をより発揮させるには、既存の所得控除や社会保障給付の整理によって財源を充実・確保させるとともに、真に支援すべき国民に給付が行われるよう、所得のみならず資産の総額もしっかりと把握する必要がある。

4.地政学リスクと地域産業に向けたエネルギー政策
強い日本経済の実現には、資源高、円安による企業収益の下押し圧力、地政学リスクの高まりなど、日本が直面する課題の克服が不可欠である。高市新政権が目指す強い経済を象徴するプロジェクトとして、「海洋産業コンプレックス」の形成を提案する。

「海洋産業コンプレックス」は、エネルギーと資源開発・素材生産がプラットフォームを共有し、自動車・電機・医療・食糧の産業への波及効果を生み出す、新たな産業サプライチェーンを構築する構想で、収益・所得の国内循環への転換、経済安全保障の強化とともに、地域を活性化し、日本経済が抱える弱みを強みに変えることが期待できる。

「海洋産業コンプレックス」に洋上風力、フュージョンエネルギー、宇宙太陽光、波力の海洋ベースの次世代発電を組み込み、全国数か所で展開することで、地域産業の発展基盤の中核となっていくことを期待したい。

5.既存の行政区域・行政制度にとらわれない強く魅力的な地方創生
地域課題が深刻化する 2040 年を見据え、地方自治制度の抜本的な再設計に着手すべき。都道府県・大都市・広域自治体を住民サービス提供の主体に位置づけ、効率性を大幅に向上させる必要がある。市町村や地元企業は、安定した住民サービスのもとで、行政区域を超えた連携により創造的な事業を生み出し地方創生に取り組むことができる。

第 34 次地方制度調査会において、「国・都道府県・市町村間の役割分担、大都市地域における行政体制その他の必要な地方制度の在り方」について議論が始まる。行政版の「人的資本経営」の導入とともに、現在ある広域自治体事業の課題を徹底検証するなど、ボトムアップの議論を期待する。

国土強靭化のためには、現在の投資規模の提示にとどめるのではなく、更新需要を含む中長期の財政計画、インフラの集中化・再編を伴う資産マネジメント、執行を支える人材の育成・確保計画を一体的に設計するなど、現行の枠組みを大胆に見直すべきである。

6.人手不足対応・強い日本に向けた産業再編
「強い経済」を実現するには大胆な危機管理投資と成長投資が重要であり、そのためには、官民が連携して戦略分野を中心に積極的な投資を迅速に行うことが重要である。また、人口減少が著しい地方においては、規模の経済によって人手不足を解消していくことも地方創生には必要である。そのためには金融面の改革も必要であり、地域金融力強化に向けた地銀のビジネスモデル改革や再編にも政策的な支援を加速すべきである。

経済安全保障の強化にも資する戦略分野を中心に供給力強化が喫緊の課題であり、それには官民連携による積極的な投資を迅速に行うことが重要である。その観点からは政府の産業政策への適切な関与のほか、産業再編が必須である。例えば、国立造船所構想の早期実現のほか、他業種においても同様の大規模な設備投資を可能とする政府の支援、2026 年以降に予定されている経済安全保障推進法改正に向けた迅速な対応、金融面からの再編を容易化する独禁法や会社法等における規制緩和等が不可欠である。


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