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リサーチ・フォーカス No.2025-072

米国で進むAI代替、雇用370万人減も ― トランプ政策も助長、求められる補完的な活用への誘導 ―

2026年03月30日 森田一至立石宗一郎西岡慎一


米国では、AIの導入によって生産性向上への期待が高まる反面、雇用が不安定化することへの懸念も強まっている。最近では、業績が堅調であるにもかかわらず人員削減を公表する企業が相次いでいるほか、大学卒業生の就職環境にも弱さがみられており、労働市場には不穏な兆しが表れている。すでに、事務職員、システムエンジニア、購買担当者といった「AIに代替されやすい職業」では、就業者数がこの2年で減少しており、なかでも20 代前半の若年層では1割以上の減少を記録している。

今後、AIの利用が人間労働の代替を伴って進む場合、雇用の減少圧力が一段と強まる恐れがある。試算によると、AIがコンピュータやインターネットと同程度のスピードで普及し、その活用が代替的な方向に偏ると、今後5年間で就業者数は最大▲370 万人の減少圧力を受ける。AIが新産業の創出を通じて人間労働を吸収すれば、望ましい経済成長を実現できるが、そうでなければ、雇用のミスマッチは解消されにくく、失業率を最大で+2%ポイント押し上げる圧力となる。とりわけ、既に厳しさを増している若年層の雇用環境を一段と悪化させる恐れがある。

AI技術が人間労働を代替する方向へ進むのか、補完する方向へ進むのかは、経済環境や市場構造、さらには政策対応にも大きく左右される。現在のトランプ政権は、移民流入の抑制、製造業の国内回帰、軍事力の増強といった政策を進めているが、これらは省人化ニーズを強め、結果としてAIの代替的な活用を後押しする可能性がある。雇用・分配への副作用を抑えつつ、生産性向上の果実を取り込むためには、AI技術を補完的な利用へ誘導する制度設計が求められる。


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