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JRIレビュー Vol.1, No.128

アジア経済見通し

2025年12月26日 細井友洋佐野淳也室元翔太呉子婧


2026年のアジア景気は、足元の好調から一転し、内外需ともに減速する見通しである。①中国経済の減速、②アメリカの半導体関税などによる外需の悪化、③不確実性の高止まりなどによる個人消費と設備投資の下押し、が理由である。とくに、外需依存度の大きい台湾、ベトナム、マレーシア、タイで景気下押し圧力が大きくなると予想する。

メインシナリオに対するアジア経済の景気下振れリスクは、①アメリカの輸出規制強化、②通貨安、③中国の「デフレ輸出」、である。アメリカが迂回輸出に対して制裁関税を発動する場合、中国からの部品・原材料に強く依存するASEANへの打撃が大きくなる。また、経常収支の急激な悪化などにより通貨が大幅に下落する場合、対外債務や不良債権の拡大を通じて実体経済や金融の安定性が損なわれる恐れもある。加えて、ASEANでは中国産品が顕著に流入していることから、中国企業が自
国の内需低迷などを背景に「デフレ輸出」を加速させ、ASEAN域内企業の生産・投資が減少するといったリスクもある。

中国では、2025年後半から景気が一段と減速し、2026年の成長率は+4.2%に低下する見通しである。①景気刺激策の弱まり、②不動産市場の低迷による逆資産効果、③半導体関税などアメリカによる輸出規制、が要因である。さらに、米中対立の激化により外需が想定以上に悪化するリスクや、国内政策が意図しないかたちで景気を弱めるリスクにも留意が必要である。

インドは、内需主導で2026年も6%超の安定成長が続くと予想する。政府の大型減税や産業・インフラ投資が個人消費と設備投資を押し上げる見通しである。産業別では、ITをはじめとするサービス業が経済をけん引する。加えて、アメリカとの関係改善が進み、ロシア産原油の購入に対する制裁関税が解除される場合、景気が上振れる可能性もある。一方で、アメリカのIT関連規制がデジタル産業の成長を阻害する下方リスクにも注意が必要である。


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