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JRIレビュー Vol.7, No.125

アジア経済見通し

2025年07月31日 細井友洋佐野淳也室元翔太呉子婧


2025年後半のアジア景気は、年前半の好調から一転して減速する見通しである。アメリカの相互関税・個別品目関税の影響や、年前半の駆け込み需要の反動減が理由である。ただし、減速の度合いは、各国・地域の経済構造に応じて違いがあると考えられる。とくに、外需依存度が高く、主力輸出品に高税率がかかる韓国やマレーシアの成長率が大きく低下すると予想する。対照的に、外需依存度が高くとも、個別品目関税の影響が小さく、中国からの代替輸出・生産移転の恩恵が見込まれるベトナムや、内需主導型のインド、フィリピンについては、減速しつつも安定成長が継続する見通しである。

アジア経済の下押しリスクは、相互関税上乗せ分の発動や中東情勢の緊迫化である。上乗せ関税が発動される場合、とくに、外需依存度の高いベトナムや台湾に深刻な影響が及ぶ見込みである。また、アメリカが対中関税を145%に戻す場合、中国は対米輸出の6割を喪失すると想定されることから、行き場を失った安価な中国製品の「デフレ輸出」が加速し、国内外での価格競争を通じて、アジア企業の経営が悪化するリスクにも警戒が必要である。加えて、中東での紛争激化は、原油価格の高騰を通じてアジアの消費と投資を下押しする恐れがあるほか、通貨安が生じて利下げ余地が縮小するリスクを高める点にも留意しなければならない。

中国は、年後半にかけて景気が減速するものの、2025年の成長率は+4.7%と深刻な景気後退は回避する見通しである。外需の面では、対米輸出が2割減少するとみられる一方、輸出先の多角化により、EUやアフリカへの輸出が増加することで、全体の輸出の落ち込みを緩和する見込みである。内需の面では、政府による景気刺激策が消費と投資を下支えすると予想する。ただし、アメリカの145%の相互関税が復活する場合には、内外需ともに大幅悪化し、成長率は+4%を割り込む見込みである。

インドは内需主導型経済であるためアメリカの関税政策の影響を受けにくいほか、政府が年前半に実施した大幅な金融緩和の効果もあり、+6%超の安定成長が続くと予想する。また、世界的なサプライチェーンの再編で、生産移転の恩恵を受ける可能性もある。ただし、これまで米政権内で影響力を持っていたイーロン・マスク氏が政権から離脱したことで、トランプ政権のIT重視姿勢が転換され、インドのIT・BPO産業に悪影響が及ぶリスクには警戒が必要である。


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