先端技術リサーチ
EAの活用動向とArchiMateの概説
2024年07月26日 先端技術ラボ 市原紘平
本レポートでは、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の活用動向とEA のモデリング言語の国際標準であるArchiMate について整理・解説する。
[背景]
2000 年代にも政府主導での導入などが旗振りされたエンタープライズアーキテクチャであるが、以下の理由などから昨今再び注目が集まっている。
・様々な先端情報技術の隆盛により、技術的な検討と制度的な変更等が並行して進行するケースが起きている。
(Blockchain と金融法制、AI と著作権法など)
・先端技術によるビジネス機会と誇張的な喧伝を正しく見極め経営へ活かすべく、
多様化する技術に対し横串の俯瞰ができる専門人材への期待が高まっている。
・公共セクターのデジタル化の必要性が高まり、政府機関による注目が高まっている。
(GHG や蓄電池に関する国際的に統一された情報共有の仕組みや、各国内や同盟域内における行政システムの
相互運用性向上の必要性など)
・(特に日本において)デジタル分野での国際競争力獲得のため、過去(2000 年代等)に概念レベルで
立ち止まっていたアーキテクチャの導入を、具体的な情報システム構築の段階まで進展させる必要性が
認識されてきた。
[レポート要旨]
●エンタープライズアーキテクチャ(EA)の有効性への再注目
社会やビジネス環境の複雑化、先端情報技術の隆盛などにより、エンタープライズアーキテクチャ(EA)への注目が再び高まっている。
日本やEU 等では、社会のデジタル化や相互運用可能な情報システムの構築を効率化すべく、政府機関主導での導入が進んでいる。
IT 先進国の米国ではエンタープライズアーキテクト(EA)が、求人数や給与、満足度などから最も人気の職業となった。
●ArchiMate とArchi を用いたEA の推進
EA のモデリング言語としてはArchiMate が国際標準であり、OSS のArchi がモデリングツールとして政府機関を含め使用されている。
Archi はOSS である上、プラグインで機能拡張できる機能を持っており、OSS コミュニティによる益々の機能向上が期待される。
●エンジニア、ビジネスパーソンへ向けての推薦事項
ArchiMate 仕様への理解を深め、EA フレームワークの考え方を業務に取り入れる。(初めから仕様通りの記述をする必要はない)
●EA 普及の展望と課題
課題が複雑化し、単一の技術や政策では解決が難しい状況に対し、全体の俯瞰と可視化を実現するEA の有効性は今後も高まる。
専門的なアーキテクチャの図(モデリングスケッチ)は非専門家には分かりづらい面もあり、非専門家向けの分かりやすい見取り図も用意する必要があるが、標準的な方法は確立されていない。
現状、EA 分野の日本語情報は特に少ない。(ArchiMate 仕様の詳細な解説書は英語で数冊あるが、日本語訳されていない)
●EA 活用の最先端研究 -生成AI のアーキテクチャ策定へ適用-
EA により、統一的な手法で記述されてこなかった企業活動や社会ニーズなどを、構造化された情報として記述・モデル化できる。
モデリングされたEA(構造化された情報)には、大規模言語モデル(LLM)や生成AI の技術を適用することが可能。
こうした分野の研究として、大規模言語モデル(LLM)を活用し、自然言語入力からUML モデルを生成する研究などが進められている。
<本レポートのハイライト動画>
EAの活用動向とArchiMateの概説

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