株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は、複数企業が参加し、子どもの権利とビジネスの接点について理解を深めていくことを活動の中心におくコンソーシアム「子どもコミッションイニシアティブ」(注1)を本年8月に設立した。その活動の一環として、従業員の仕事観やウェルビーイングに、子どもとの関係がもたらす影響などに関する意識・実態調査を行った。その結果を取りまとめたレポートを、「世界子どもの日」である本日11月20日に発表する。本レポートが、子どもの権利や従業員ウェルビーイング向上施策について考える一助となれば幸いである。
■レポート
従業員のウェルビーイングと子どもとの関係の意識・実態調査 -10~18歳の子どもを持つ働く親を対象に、仕事観やウェルビーイングとの関係に注目-

■調査の背景
・企業は、従業員の賃金、労働時間、健康などを通じて、子どもの生活や成長にも関わっており、「子どもの権利とビジネス原則」でも重要な論点として示されている。近年は、短時間勤務やテレワーク、休暇制度の柔軟化など、仕事と家庭を両立しやすくする取り組みが広がってきた。
・また、企業では従業員のウェルビーイング(心身や社会的な充足感や幸福)を高める施策にも関心が高まるなか、ダイバーシティや健康経営といった組織としての施策に加えて、個人のウェルビーイングに影響を及ぼす働き方や組織の在り方について検討が見られるようになっている。
・しかし、これらの施策で子どもを持つ従業員を対象としたものは「3歳まで」「小学校低学年まで」など、低年齢層の育児を想定したものが多く、それより上の年齢層(10~18歳)の子どもを持つ従業員はこれまで注目されてこなかった。この時期の子どもは、自らの進路選択時期を控えて職業に興味関心を持っていたり、ある程度自分で身の回りのことをできたりすることから、親の仕事や働き方に対する自分なりの思考を持っていると考えられる。
・こうした子どもとの関わりは、親の社会的ウェルビーイング(注2)にも影響を及ぼすことが示唆されている。企業にとってはこうした子どもを持つ親への理解を深めることが重要であり、それがひいては子どもへ好影響をもたらすことにつながる可能性がある。
■目的
・10~18歳の子どもを持つ従業員を対象に、自身の子どもと関わるなかで形成される仕事観や生活観について、親自身の感じ方に着目してその意識や実態を明らかにする。
・これにより、企業が従業員のウェルビーイング向上に向けたさまざまな施策を検討するための素地を提供する。
(注2)「社会的ウェルビーイング」の定義は複数あるが、ここでは個人に①社会との繋がりがあり、②自分の居場所・役割があって、③周囲に受け入れられていると感じること、と整理した(参考:村上芽(2024)「企業が従業員の社会的ウェルビーイングに取り組む意義|日本総研」)。家族は社会の基本単位とされることから、親にとって子どもとの関わりは社会的ウェルビーイングに影響する。
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

