株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は、2025年2月18日、三井住友ファイナンス&リース株式会社(以下、SMFL)の協力のもと、茨城大学の学生を対象に「SAKI寄付教育プログラム(注1)」を実施した。本プログラムは、「未来を担う若者たちが、寄付を通じて社会課題に対する理解を深め、自らの意思で社会と関わる力を育むこと」を目的として日本総研が開発したものだ。このプログラムの特長は、ただ寄付を知識として学ぶのではなく、実際に社会課題を自ら調べ、議論し、意思決定を行うというプロセスを通じて、「自分の価値観と向き合う」ことにある。
本プログラムを通じて実際に寄付金として使われるお金の原資は、三井住友ファイナンス&リース株式会社のSDGsリース「みらい2030®」(寄付型)のリース契約先のリース料の一部から拠出されている。企業の社会貢献活動との連携によって、教育と社会・経済活動を接続するモデル構築を目指すと同時に、企業が提供した実際のお金を、学生たち自身が「どこに・なぜ・どう使うか」を考え、決定するというリアルな体験が用意されている。

実施内容の概要
これまでも様々な高校や大学で実施してきたSAKI寄付教育プログラムは、知識習得、調査・分析、寄付先決定の3つのセクションで構成されている。以下に、実際に茨城大学の学生に向けた半日のプログラムで提供した内容と、プログラム実施後に見られた変化について紹介したい。Section 1:「寄付」ってなに?
まず、寄付の定義や歴史的背景、現代社会における役割について日本総研の社員から講義形式で伝え、「寄付とは何か」を考えてもらった。講義では特に「寄付は誰にでもできる社会参加の一つ」であるという視点が強調され、学生の多くがそれまで持っていた「特別な人が行うもの」といった印象を払拭するきっかけとなった。学生からは「少し遠い世界の話だと考えていたが、自分事として寄付、社会問題について考えることができた」といった声が寄せられた。
Section 2:「寄付先」を知ろう
続いて、学生は4つのグループに分かれ、それぞれ異なる非営利団体の活動について調査を行った。途上国支援、難病支援、森林保全、補助犬育成、など、さまざまな社会課題に対する取り組みを比較検討し、それぞれの団体のミッションや活動の意義、社会的インパクトについて議論を深めた。学生からは、「もっと調べようという気持ちになった」といった声が上がり、情報を受け取るだけではなく、自ら調べ、判断する力を磨く機会となった。
また、SMFLの担当者の方から、寄付原資の提供者としての想いを学生に伝えてもらった。「寄付先」の活動内容や思いが、「寄付者」の想いとマッチしているか、考えるきっかけとなった。
Section 3:「寄付先」を決めよう
最終セクションでは、各グループがそれぞれの活動を行う非営利団体の代表になったつもりで寄付金を募るためのプレゼンテーションを行い、投票によって最終的な寄付先を一つに決定した。今回寄付先として選ばれたのは、「認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク」で、難病と向き合うこどもとその家族を支援する同団体の活動に、多くの学生が共感を寄せた。
「調べてみると、思いの外お金がかかる項目があったりして、寄付をいただけるありがたみを感じました」との感想が寄せられた。また、また、自分のグループが取り上げた団体が選ばれなかったことに悔しさを滲ませるなど、支援団体の視点に立って、寄付を集める苦悩を体験する機会にもなった。短い時間の中で寄付を受ける側、寄付をする側、両方の視点を持つことができたことが伺える。
プログラムを通じて得られた変化
プログラム終了後のアンケートでは、以下のような変化が顕著に見られた。本プログラムの参加者の中には、実際にクラウドファンディングを主催したことがあるなど、寄付を身近に感じている学生がいる一方で、寄付に対して少し距離を感じていた学生も参加していた。本プログラム実施後のアンケートでは、「講座を受ける前と比べて、寄付についての見方・考え方が変わったことはありますか?」という問いに対して、92%の学生が「寄付に対する印象が良くなった、興味を持った」と回答し、寄付に対する価値観を見直し、今後の行動変容につながる可能性のある学びを得たことが確認された。
また、「みんなが寄付するようになるために、あなたが必要だと思うこと上位3つを選んでください」という問いに対して、第1位として最も多く寄せられた回答は「寄付先の団体についてもっと知る機会や直接話す機会が増えること」(50%)だった。実際に寄付先団体を調べ、団体の活動を知ったことで、「知る」ことの大切さを感じた学生が多かった。
他にも、以下のようなコメントが寄せられた。
・「寄付することに迷いがあったけれど、今回の寄付先の団体について調べたり、話を聞いたりして、できれば寄付を続けるべきだと感じました」
・「自分が調べた団体に寄付してもらいたいという視点で発表して、とても良い経験になりました」
・「とても視野が広がりました」
・「様々な寄付先を知ることができ、今後自分にも何かできることはないかと考えながら生きていきたいと思います」
・「寄付先について考えることや寄付している団体について考えることは日常的にしないので、新鮮で楽しかったです」
今回の体験が、寄付という行為や、社会課題、それに向き合う団体について知るきっかけとなり、寄付の「自分ごと化」が進んだことが伺える。
未来へつなぐ「お金の教育」
今後は、中高生への展開や、全国の教育機関への導入促進、さらにはオンライン形式での提供によって、より多くの若者に社会との接点を届けるべく取り組みを広げていくことを目指している。日本総研では、これからも教育・社会・企業をつなぐハブとして、若者の主体的な社会参加を支える環境づくりを推進していく。
(注1) SDGsリース「みらい2030®」(寄付型)と連携した新しいお金の教育「SAKI寄付教育プログラム」の提供について
SAKIは、日本総研が提供するサステナビリティ分野の人材育成プログラムの総称で、Sustainability Action and Knowledge Immersionの頭文字をとったもの。SAKI寄付教育プログラムはその一部を構成する要素。
<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 事務局
Email:minami.kanonatjri.co.jp
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参考ページ
サステナビリティ人材育成|日本総研