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【社会・環境インフラにおける政策・事業革新】
「社会・環境インフラにおける政策・事業革新」~連載開始にあたって~

2021年06月11日 副島功寛


 今、私たちは地球規模でみても豊かで質の高い生活を営んでいます。その背景には先人の方々の知力を尽くした活動成果がありますが、私たちと同世代の多くの方々は今、「この生活が次世代においても維持されるのか」という不安を抱えて日々を過ごしているのではないかと思います。
 私たちは、重要な社会基盤の一翼を担う「廃棄物、上工下水道、道路」といった「社会・環境インフラおよびまちづくり」の分野を中心に、公共・民間セクターの方々とともに、公共サービスに係る政策・事業の社会実装に向けた活動を進めています。2020年初頭からのコロナ禍によって見過ごされがちですが、社会・環境インフラの処理・供給システムは、以下のような構造的な課題に直面しており、既存の政策・事業の延長で公共サービスを継続することが難しくなっています。
① 人口減少等を背景とした「需要減少」が、事業の前提になることが不可避である
② 安定した公共サービスを支えるために膨れ上がった資産(施設)が老朽化している
③ 自然災害(感染症含む)の頻度・規模が増加かつ広域化し、影響が拡大している
④ 脱炭素社会への対応やデジタル化への適応が、これまで以上に要請される
⑤ 自治体財政の逼迫と国の支援余力低下を念頭に、事業を持続させる必要がある

 こうした課題に対し、従来は広域化、災害対応、脱炭素といった個別課題ごとに対策・計画が検討されることが一般的でした。一方、各課題間の構造的な結びつきが強まっていることから、今後は各課題を一体的に捉え、自治体の関係部局が民間事業者を巻き込み、「スクラム型」で政策・事業を統合的に検討・推進していくことが必要になっています。
 また、脱炭素をはじめとした議論は、「2050年」をターゲットに行われることが多くなっていますが、社会・環境インフラの重要な事業資産である処理・供給施設(設備)の想定稼働年数は、「30年超」が主です。つまり、2050年の社会・環境インフラの処理・供給システムを時代に即したものに更新するためには、今から、中長期の政策・事業の在り方を構想し、議論し、社会実装を促す活動が求められます。

 もう一つ、公共財政が逼迫するなかで公共サービスへの財政支出の妥当性を説明していくには、政策・事業が生み出すアウトカム(成果)を、エビデンス(根拠)をもとに適正に評価することが重要です。社会課題の解決では、経済的価値にとどまらない公的価値を考慮した政策目標の設定が必要ですが、その実践はPFS(成果連動型民間委託契約)やEBPM(証拠に基づく政策立案)等の手法を活用するだけでなく、「アウトカム起点の官民連携事業を開発する」ところまで踏み込まなければ、本質的なアウトカムに至ることが難しくなっています。社会・環境インフラやまちづくりにおいても、多様な社会課題への対応が求められるなか、アウトカム起点の官民連携事業を開発するための一連のプログラム(①公共サービス開発、②官民連携事業化、③モニタリング・評価・改善提案)の社会実装が期待されています。
 
 こうした問題意識から、私たちは「社会・環境インフラにおける政策・事業革新」をテーマとした連載を開始することにしました。各記事では、現場でイノベーション要素を含む政策・事業の社会実装に携わる研究員の立場からさまざまな着眼点を提示します。2050年に向けた政策・事業に係る問題提起を行い、公共・民間の各セクターにおいて社会・環境インフラやまちづくりに関わる方々との議論を進めるきっかけにしたいと考えています。①従来と異なる視点から潜在する社会・経済的価値の発掘、②国内外で歴史的に蓄積されてきた政策・事業ノウハウを統合したスキーム・手法等の開発・活用、③事業のイノベーション要素と現場力の緻密なすり合わせ、など、理論と実践に根差した具体の着眼点について、本連載を通じて考えていく予定です。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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