現代のソフトウェア開発は、アジャイル開発やDevOpsの普及により、開発スピードが向上し、同時にシステムの複雑性も増してきている。こうした環境下で、プロダクトやサービスの品質を担保する「ソフトウェア品質保証(QA)」の重要性は高まりつつある。また、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)をはじめとした「生成AI」の技術は、IT業界全体に大きな変革をもたらしている。最近では、「AI駆動開発」という言葉が流行し、ソフトウェア開発に生成AIを取り入れることは当たり前になってきている。実際に、GitHub CopilotやCursor, Codex, Claude Codeなど、生成AIを活用した実用的な開発支援ツールも登場している。こうした動きによってエンジニアの業務も大きく変化しつつある。AI駆動開発によってソフトウェア開発の効率化が期待される一方、求める品質基準に満たないケースが増加する可能性もあり、その意味でもソフトウェアの品質保証の重要性は高まるだろう。
このような状況の中、生成AIの技術的な進展は、これまで人手と経験に大きく依存してきたソフトウェア品質保証、特にその中核をなす「ソフトウェアテスト」に変化をもたらす可能性を秘めている。生成AIが有効活用されることで、従来のソフトウェアテストの自動化の限界を超えた品質保証を実現できる可能性があり、結果としてソフトウェア開発全体の品質向上とコスト削減、工期の短縮が両立されるといった効果が見込める。
そこで、本レポートでは、生成AIの進展とソフトウェア品質保証領域に与える影響について述べたのち、生成AIツールや国内組織における取組み事例などの動向についてまとめる。更に、ソフトウェア品質保証の今後の変化を踏まえ、QAエンジニア個人や開発組織がどのような行動をしていくべきか提言する。
- 第1章では、ソフトウェア品質保証の意義と重要性、生成AIによる効果・影響について述べる。
- 第2章では、生成AIを活用したソフトウェア品質保証において想定されるユースケースや生成AIツールの動向、国内の各企業・組織での取り組みについてまとめる。
- 第3章では、現状の生成AIの課題を整理し、人間のエンジニアとAIとの協調による今後のソフトウェア品質保証業務の変化について述べる。
- 第4章では、3章で述べた今後の変化を踏まえ、開発組織やQAエンジニアがどのように変革すべきか考察する。
- 生成AI活用を模索、あるいは今後活用したいと考えるソフトウェアエンジニア(特にQAエンジニアのようなソフトウェア品質保証業務に従事する人)
- ソフトウェア品質保証の今後の展望について知りたいマネージャーやPM、エンジニアリーダー
なお、LLMについての基礎知識があると、本レポートの内容についてより理解が進むものと思われる。
本レポートを通じて、読者の皆様がソフトウェア品質保証業務領域へのAI活用について理解を深め、今後の技術投資やPoCの企画・実施、ツールの導入可否判断などに活用して頂ければ幸いである。また、開発組織の変革や施策の検討、QAエンジニアのスキルアップにも役立つことを期待する。
▼目次
ソフトウェア品質保証の意義と生成AIがもたらす影響
- ソフトウェア品質保証業務とは
- 生成AIの進展とQA業務・ソフトウェア開発への影響
- QA業務の自動化範囲の拡大によるQCD適正化
ソフトウェア品質保証業務への生成AI活用動向
- 生成AIを活用したQA業務の想定ユースケース
- QA業務の支援に役立つ生成AIツールの動向
- 国内の各企業・組織での取り組み
ソフトウェア品質保証業務の未来
- 現状の生成AIの限界と品質保証への導入における課題
- 品質保証における生成AIとエンジニアが担うスコープの変遷
- AIの進展による今後の品質保証業務の変化
今後を踏まえて開発組織・QAエンジニアがすべきこと
- QAエンジニアを支える開発組織の役割
- 今後を踏まえたQAエンジニアの役割と求められるスキル
参考・コラム
- 【参考】QA4AIの取り組み・考え方
- 【コラム】ニューロダイバーシティ ~生成AIを効果的に使う人材の登用~
- ニューロダイバーシティの概要と人材の活躍事例
- 生成AI時代に活きる発達障害がある人の強み~
先端技術ラボ 伊藤 蓮
専門領域
AI全般の中長期的な動向調査および、数理最適化、シミュレーションなどのAIに関連した応用研究・技術検証に従事。
創発戦略センター 木村 智行
専門領域
発達障害がある人が活躍する多様で柔軟な就労システムの実装
新規事業開発(オープンイノベーション)
先端IT活用
活動実績
障害福祉NFTプロジェクト Good Job! Digital Factory企画協力
「ニューロダイバーシティマネジメント研究会」 立ち上げ・リード
SMBC京大スタジオ 「発達障害特性がある人材の能力発揮支援」 PJ 共同代表研究者
学術論文
Takumi Aita, Tomoyuki Kimura, Yusuke Kaneko. Designing a Blockchain Token Distribution Model to Encourage Action on Greenhouse Gas Reduction. 2023 IEEE International Symposium on Technology and Society (ISTAS). pp. 1-5 (2023)
Yusuke Kaneko, Shuntaro Tanaka, Tomoyuki Kimura, Jun Okumura, Shigeyuki Azuchi, Shigeyuki Osada. DeExam: A Decentralized Exam Administration Model using Public Blockchain. BIOTC 2021: 2021 3rd Blockchain and Internet of Things Conference. pp. 1-7 (2021)
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