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JRI Future Signal#4 Switch Identity|複数の自己を切り替える

(背景)記憶を自由に操作する研究開発が進んでいる
 「記憶から消したい」ことがある人の割合は全体で56%以上。特に20歳代・30代歳の女性では70%近くの人が、なんらかの人の記憶を消去したいと願っているという(*1)。こうした中、生物学専門誌「カレント・バイオロジー」に「経頭蓋磁気刺激法(TMS)によって忘れたい記憶を修正することに成功した」との論文が掲載された(参考:都合の悪い記憶を消す)。また、米国国防高等研究計画局(DARPA)ではAI脳インプラントによる「マインドコントロール」を実施するチップの開発を進めている(参考:うつ病は“マインドコントロールチップ”で解決)。
 他方、COVID-19の世界的な拡大を受けて、多機能なマスクが次々と上市されている。例えば、日本のスタートアップ企業であるdonut robotics社は、マスクを通じて「声を文字にする」「8カ国語に翻訳をする」といったことを実現した(参考:マスクの用途は感染予防だけにあらず)。

(変化の概要)マスクのように外見を日々切り替える
 脳科学の進展によって人の脳の機序が明らかになるにつれ、消したい記憶を改変したり、残したい記憶を保存したり、人工的に気分を操作する、といったことが常態化していくだろう。まるでメモリーカードをスロットに抜き差しするように、肉体が一つであったとしても複数の過去や現在を有するようになるかもしれない。すると、それぞれの自己を所有しながら都合の良いように自己を切り替えることが可能になるだろう。また、日常化した(多機能)マスク着用の延長線で想定されるのは、外見もその日ごと、その時間ごとに切り替えることができるようになる未来だ。ワンタッチで内面・外見ともに切り替えることができる、そんな暮らしが現れることだろう。


(変化後の社会)様々な自己を「ポートフォリオ」として管理する
 ある時は冷静沈着な分析者として、ある時は執着心の強い活動者として、ある時は友好的な仲介者として、といった形で各自がその時の気分やシチュエーションにフィットする自己を発見しながら、自己のポートフォリオを形成していくようになるかもしれない。仮にある自己が失敗しても記憶の改変などによって、当該の自己を消すことができるのだ。結果、世界には人生や価値観がより多様になり、「みかけ上の」人口以上の活動が生まれるようになるかもしれない。


背景となる未来の兆し
都合の悪い記憶を消す
経頭蓋磁気刺激法(TMS)という手法で、記憶の定着を妨げる効果が証明され、実用化の段階にきている。今回、経頭蓋刺激と記憶の再固定化を組み合わせた手法で、不快な記憶を修正することに成功した。記憶が呼び起こされた直後は記憶を改変できるという。都合の悪い記憶を選択的に改変できるかもしれない。
[出所]https://forbesjapan.com/articles/detail/36872


うつ病は“マインドコントロールチップ”で解決
米軍の新技術を開発している国防高等研究計画局(DARPA)の科学者たちは、気分を変更できるAI脳インプラントの実験を開始。気分障害と関連した活動パターンを検出できる人工知能アルゴリズムでAIが患者の脳にショックを与え、健康な状態に自動的に戻すことができる。専門家は、パーキンソン病から慢性的な抑うつ症まで、広範囲の病気の患者にこのチップが有益であり得ると信じている。
[出所]https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-5120441/Mind-control-AI-chips-alter-persons-moods.html


マスクの用途は感染予防だけにあらず
日本のスタートアップ企業がスマートフォンに接続するスマートフェイスマスクを開発。通話はもちろん、音声でテキストメッセージの送信や、メモ・議事録の作成、日本語から他の8カ国語への翻訳も可能。マスクは感染症対策だけでなく、ビジネスを円滑に進めるツールとしての位置付けなのか。
[出所] https://www.forbes.com/sites/simonchandler/2020/06/26/coronavirus-japanese-firm-unveils-smart-face-mask-that-connects-to-phones/#2c9f0add3f3a


(*1)ニュースサイトしらべぇ:記憶から消し去りたい相手がいる人は6割 「元カレが今も憎い…」(2020/03/30)


関連リンク:
◆スペシャルウェブサイト:デジタル社会の未来シナリオ

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