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ビューポイント No.2026-024

≪自律協生社会シリーズ⑩~内閣改造後の高市政権に望む≫ 第二次高市政権に求められる国内外の信認を高める経済政策

2026年09月29日 西岡慎一


今般、第二次高市改造内閣が発足した。以下では、財政・金融政策に焦点を当て、新政権が直面する課題と求められる政策の方向性を論じる。

1.国内外の経済は新たな局面に
世界経済は新たな局面を迎えている。大国の対外姿勢が変容するなかで供給面のリスクが高まる一方、安全保障や技術革新を背景に官民の投資需要が膨らんでいる。中東情勢の緊張は長期化の様相を呈し、エネルギー供給への不安が増している。人工知能を巡る競争の激化は、半導体やデータセンター、電力インフラなどへの巨額投資を促し、各国政府も防衛力の強化や経済安全保障の確保に向けた支出を積み増している。世界経済は急変しやすく、物価には上昇圧力がかかりやすい構図が鮮明になっている。

日本でも供給制約が強まるなか、金融政策の正常化と財政需要の拡大が同時に進んでいる。人手不足が深刻化していることに加え、エネルギー資源の調達構造はなお脆弱であり、基調的なインフレ圧力が高まっている。日銀は物価安定に向けて利上げを急いでいるが、政府は防衛、社会保障、成長投資、経済安全保障など幅広い財政需要に直面している。消費税減税を含む家計支援策への要請も根強く、物価の安定と経済の底上げ、財政の持続可能性をいかに両立させるかが政策運営の重要な課題となっている。

こうした内外情勢の変化は、世界的に金利上昇圧力をもたらしている。インフレを巡る不確実性や財政需要の拡大が各国の長期金利に反映され、その連動性も高まっている。日本でも、金融正常化に伴って市場による価格形成の重要性が増し、海外金利の変動が波及しやすくなっている。同時に、日本の金利上昇が海外市場に及ぼす影響も大きくなっている。金利を巡る相互依存の強まりは、日本の財政・金融政策が国内だけで完結するものではなく、海外市場との関係を一層意識した運営を求められることを意味する。

2.国内外の信認を高める財政・金融政策へ
(全体感)
世界経済の変動が大きくなり、金利の国際的な連関が強まるなか、財政・金融政策に対する国内外の信認を確かなものとすることが、これまで以上に重要となる。財政・金融政策の役割分担が曖昧になり、物価の安定や財政の持続可能性への責任が不明確になれば、その懸念は市場金利や為替に反映され、政策の自由度を狭めかねない。政府と日銀には、経済や金融情勢に関する認識を共有し、それぞれの責任と権限のもとで役割を果たすことが求められる。政府は供給力の強化と持続可能な財政運営を担い、日銀は物価安定に責任を持つ。この役割分担を政策運営の軸に据える必要がある。

(財政政策)
財政政策では、幅広い需要刺激よりも、供給力の強化と将来の成長につながる支出を優先すべきである。既存の歳出を見直すとともに、政府が掲げる重点分野のなかでも比較優位や将来需要が見込まれ、民間だけでは投資が進みにくい分野に支援を集中すべきである。その際、個別企業への支援にとどまらず、人材、研究開発、インフラなどの共通基盤を整備し、企業間の連携や人材・技術の集積を促すことが重要となる。

消費税減税はこうした政策の優先順位に照らせば、積極的に位置づけられるものではない。政府は、消費税減税を給付付き税額控除への移行措置と位置づけるが、需要を広く刺激し、財政余力を損なう点には慎重な検討が必要である。臨時国会での法案審議では、減税に必要な財源を具体的に示し、2年間の措置終了後に税率を確実に戻すための手順と、給付付き税額控除への移行工程を明確にすべきである。あわせて、所得把握の精緻化や給付インフラの整備を進め、家計の状況に応じた効果的な支援へ軸足を移し、税・社会保障制度全体の再設計につなげることが重要である。

世界経済の振幅が大きくなるもとでは、危機時に機動的な対応を可能にする財政余力を平時から確保しておくことが欠かせない。今後の補正予算や年末の翌年度予算編成では、首相が言及した新規国債発行額40兆円程度という水準を念頭に、当初・補正を通じた通年の発行額を抑制する方針を具体化すべきである。社会保障関係費についても、賃金・物価の上昇に必要な対応を講じつつ、政府が定めた歳出の目安に沿って、改革・効率化を着実に進めるべきである。税収の上振れを恒常的な歳出拡大に充てず、債務削減や将来への備えに振り向け、恒久的な歳出には安定財源を確保するという原則を堅持すべきである。

(金融政策)
政府は中央銀行の独立性を尊重し、日銀は物価安定という本来の使命に即した政策運営を徹底すべきである。財政需要の拡大や利払い負担への配慮から、必要な金融正常化を遅らせてはならない。財政の持続可能性は財政政策の責任で確保し、その負担を金融政策に転嫁しないという原則が両政策への信認を支える。日銀には、利上げの間隔が短くなり、国債買い入れの減額も続くなか、政策判断の根拠や運営方針を丁寧に説明し、市場との緊密な対話を通じて正常化を円滑に進めることが求められる。

同時に、金利の国際連関が強まるなかで、海外発のショックなどによって国債市場の機能が損なわれる事態にも備える必要がある。国債市場の流動性や価格形成機能が著しく低下した場合には、日銀が一時的な買い入れによって市場機能の回復を支えることはあり得る。ただし、その目的は市場機能の回復にあり、金利上昇そのものの抑制や政府の資金調達の支援にあるわけではない。物価安定に向けた政策運営と危機時の市場安定化措置を明確に区別し、危機対応が財政従属につながらない枠組みを整えておくことが重要である。


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