リサーチ・フォーカス No.2026-048 生産性改善なき賃上げが強める基調的インフレ ― 日銀は中立金利を超える利上げを迫られるのか ― 2026年09月29日 大島侑真、西岡慎一わが国では、賃上げの定着を背景に、基調的な物価上昇圧力が強まっている。経済全体の労働コストの伸びはバブル期に匹敵する水準に高まっており、足元では、労働コストの上昇が消費者物価の伸びに大きく寄与している。とりわけサービス分野では、基調的な物価上昇率が2%を超える指標もみられるほか、個別品目の価格変動率の分布にも、2%前後を頂点とする山が形成されつつある。今後も高い賃上げ率が続けば、基調的な物価上昇率が2%を上回る可能性もある。人材の確保や定着に向けた賃上げは経営戦略上不可欠となっており、その潮流は容易には変わらないとみられる。一方、労働生産性の改善は賃金上昇分を十分に吸収するには至っておらず、企業が収益を維持するには、販売価格への転嫁が必要になる。現在の賃上げペースが続く一方、生産性の改善が十分に進まず、企業が労働分配率を一定に保つかたちで利潤を確保すると仮定すれば、中長期的には消費者物価上昇率は3~4%に達する計算になる。わが国の政策課題は、単なる賃金引き上げから、2%の物価上昇と整合的な賃上げのあり方を考える局面に移りつつある。わが国では、期待インフレ率が2%に十分アンカーされていないとみられるだけに、想定を上回る労働コストの上昇が、企業や家計、市場参加者の物価観を変化させ、期待インフレ率の上振れにつながる可能性がある。実際、深刻な人手不足に直面する産業ほど、期待インフレ率が高い傾向にある。現状のような生産性改善なき賃上げが続けば、日銀は中立金利を超える利上げによって賃金の上昇ペースを抑える必要に迫られかねない。ようやく根付き始めた賃上げの流れを持続させるためにも、官民を挙げて生産性の向上に取り組むことが欠かせない。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)