リサーチ・フォーカス No.2026-013
日本と欧州が直面する「同盟国のトリレンマ」 ― 日本も辿る欧州の道、双方の協調で負担軽減を ―
2026年05月26日 立石宗一郎、中井勇良、西岡慎一
国際秩序が変容するなかで、米国は同盟国に対して自国・地域防衛の主体的な責任を果たすよう求めており、日本や欧州は安全保障の自立的な確保を迫られている。軍事基盤が必ずしも十分でない米国の同盟国にとって、防衛費の増額はトリレンマを内包しており、①防衛力の強化、②財政の持続性、③政治の安定の3つの要素は同時に満たされにくい構造にある。
欧州ではこの問題がすでに顕在化しつつある。過去の欧州では、防衛費増額は社会保障支出の削減よりも、財政拡大を招く傾向が強く、「大砲もバターも」ともに選択されてきた。しかし、足元では財政悪化への懸念が強く、財政規律が優先される結果、政治的な緊張が高まっている。緊縮財政による国民負担の増大や再分配機能の後退への反発が右派・左派の双方から噴出しており、こうした政治的混乱がさらなる経済停滞を招くという負の循環を生み出している。
今後、日本も同様の構図に直面する可能性がある。防衛費の増額は当初、財政負担の拡大を通じて国債発行の増加を招く公算が大きいが、結果として財政規律に対する市場の信認が揺らぐと、緊縮財政を巡る政治的対立が深刻化しかねない。最終的には、増税や社会保障給付の削減といった選択が不可避となる。
こうしたトリレンマを完全に解消することは難しいが、日欧が協調することで、部分的な負担軽減を図る余地はある。たとえば、日欧双方が進める防衛産業の強化について、技術開発や調達の効率化を既存の枠組みを発展させながら共同で進めることで規模の経済を働かせ、一定程度、財政負担の緩和につなげることが期待できる。また、防衛負担のあり方を巡って米国との対話・交渉を協調して行うことも、負担の過度な偏在を防ぐ方策となりうる。
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