リサーチ・アイ No.2025-071
相互関税が本格発動も、グローバルな景気後退は回避へ ― 米中対立激化や米貿易赤字の未解消による関税引き上げには要警戒 ―
米国は、各国・地域との関税交渉を踏まえ、改定された相互関税上乗せ分を8月7日から発動。個別品目についても、8月1日に銅への追加関税を発動するとともに、半導体、医薬品への関税を近日中に発表予定。
これらの措置により米国の平均関税率は足元の9%から26%に上昇する見通し。米国では、これまで発動された関税の価格転嫁が本格化することも相まってインフレ率が上昇し、年後半の景気を下押しする見込み。この結果、2025年の米国のGDP成長率は1%台半ばにとどまる見込み。
関税引き上げにより、世界景気も減速する見通し。もっとも、ほとんどの国・地域では相互関税率が当初の想定を下回ったため、世界GDPの押し下げ幅は▲0.7%にとどまり、今年は3%程度の成長率を維持する見通し。
多くの国で相互関税を巡る交渉が妥結したことで、先行きの不確実性はある程度低下しているものの、一段の関税引き上げリスクは残存。米中両国は交渉を90日間延長することで合意した一方、対立激化で高関税の応酬が再び実施される恐れも。その他の国についても、米国の貿易赤字の解消が停滞すれば、関税率が引き上げられる可能性。すべての国・地域に対する相互関税率が、米国が交渉過程で言及した最大値まで引き上げられるケースでは、世界GDPの押し下げ幅は▲1.2%に拡大し、景気後退懸念が高まる点に要警戒。
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