リサーチ・アイ No.2025-056 トランプ政策が加速させる米国の格差拡大 ― 低所得層の支出抑制が強まり、消費の下押し要因に ― 2025年07月11日 森田一至、立石宗一郎米国では、所得格差の拡大が継続。所得階層上位20%の高所得層が所得全体の50%を占めており、この割合は年々上昇。こうした流れのなかで、トランプ政権の政策は、家計間の実質購買力の格差を一段と広げる恐れ。この要因として、以下2点が指摘可能。第1に、関税引き上げ。トランプ政権による度重なる関税発動を受け、米国の平均輸入関税率は20%まで上昇。食料品など生活必需品の価格弾力性は低いことから、これらの品目では関税コストが価格に転嫁されやすい傾向。低所得層では、生活必需品への支出割合が高所得層と比較して高く、関税による負担が相対的に大。第2に、財政政策。7月4日に成立した減税・歳出法「大きく美しい1つの法案」では、高所得層向け所得減税の延長や州・地方税(SALT)、相続税の控除上限引き上げが盛り込まれた一方、メディケイドなど低所得層向け支出は歳出削減の対象に。こうしたトランプ政策を受けて、高所得層は減税による所得押し上げ効果が関税による負担増を上回るものの、低所得層は関税影響に加えて公的支援の縮小が負担感を高める公算大。米イェール大学予算研究所の試算によると、今後10年間で上位10%の所得は1.5%押し上げられるのに対し、下位10%は所得対比▲6.6%の負担増。低所得層の所得減を通じた支出抑制の動きの強まりが、米国の消費の下押し要因となる見込み。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)