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Economist Column No.2026-010

地方銀行における「越境再編」と今後の課題 ―地域・業種を超えた競争に勝ち抜く「攻め」の戦略が重要に―

2026年04月20日 大嶋秀雄


■地方銀行における「越境再編」の増加
近年、地方銀行(地銀)では、同一県内での経営統合・合併(再編)が多くみられていたが(注1)、足元で、他の都道府県の地銀と再編(越境再編)する動きが出てきている。2025年4月には、新潟県の第四北越フィナンシャルグループ(FG)と群馬銀行が経営統合で合意(2027年4月目途、群馬新潟FG)したほか、本年3月には、しずおかFGと名古屋銀行が経営統合で合意(2028年4月目途)した。また、2009年に経営統合してフィデアホールディングス(HD)を設立した秋田県の北都銀行と山形県の荘内銀行は、2027年1月に合併してフィデア銀行となる見通しである。そのほか、経営統合ではないが、2025年3月には、静岡銀行・八十二銀行・山梨中央銀行が包括業務提携を締結して富士山・アルプスアライアンスが発足し、直近では、滋賀銀行と大阪府の池田泉州HDが資本・業務提携を検討していることを公表した。

■アライアンスから経営統合へ
異なる都道府県の銀行同士の場合、同一県内に比べて店舗統廃合等による経営合理化の余地が限られることもあって、負担が重い経営統合は行わずに、アライアンスにとどめるケースが多い。もっとも、第四北越FG・群馬銀行は2021年から、しずおかFG・名古屋銀行は2022年からアライアンスを締結していたところから、今回、経営統合に踏み切った。
アライアンスは、経営の独立性を維持し、統合にかかる負担を回避しつつ、協働によるビジネス規模の拡大やシステムの共同開発、顧客の紹介といった成果を得られやすい。一方、別の銀行であることは変わらないため、顧客情報・機密情報等の連携が難しかったり、店舗の統廃合やサービス・組織の共通化といった踏み込んだ経営の合理化のハードルは高く、一部で競争関係が残ったり、時間が経つにつれて協働機運が低下する可能性もある。経営統合を行えば、統合にかかる様々な負担は生じるものの、さらなる統合効果を期待できる。アライアンスを通じて相互理解が進んでいれば、経営統合を進めやすくなる可能性もある。

■規模拡大・競争力強化に適した「越境再編」
越境再編は、同一県内での再編に比べて、規模拡大・競争力の強化に適している。同一県内の再編では、店舗統廃合等による経営合理化の余地は大きい一方、各行がビジネス拡大余地(地域での他行シェア)を消しあうことになる。しかし、越境再編の場合、重複が少なく、“他行シェア”は基本的にそのままであり、地域でのビジネス拡大余地が残る。また、競争力のあるサービスを持っている銀行であれば、他の地域の銀行との経営統合によって、他の地域に展開するための強固な基盤を得ることができる。たとえば、しずおかFG・名古屋銀行の経営統合は、しずおかFGからみると、三大都市圏の一角である中京地域への足掛かりを得ることができるといえる。加えて、近年重要性が増しているデジタル金融サービスや非金融サービスの展開・収益化においても、より多くの取引先に提供できる「面の拡大」が有利であり、越境再編によって、ビジネスエリア・取引先を広げることが有効といえる。
とくに、足元では、「金利のある世界」の到来によって、中核の預貸ビジネスの収益性が改善するなか、預金獲得競争の活発化など、競争環境の厳しさが増している。さらに、ネットバンクやメガバンクに加え、ブランド力のある事業会社がネットバンク等の提供するプラットフォームで銀行サービスに参入するなど、地域・業態・業種を超えた競争も激化している。低金利環境下では、経費削減を重視した「守り」の戦略が有効であったが、「金利のある世界」では、積極的にビジネスを獲得していく「攻め」の戦略が不可欠であり、競争力強化に適した越境再編は重要な選択肢となるだろう。

■再編“後”の統合がカギに
もっとも、越境再編をすれば、自然と競争力が高まるものではない。越境再編では、持株会社に各行がぶら下がる経営統合が一般的であり、完全に統合される合併とは異なり、再編“後”に、傘下行の協議のなかで統合の形を作っていくことになる。経営統合をしても、その後、傘下行の主導権争いや役職員の反発などによって統合を進められないと十分な効果は得られない。再編“後”の統合プロセスにおいて、システム・本部機能の統合や専門部署・子会社等のグループ内での共有、サービスの共通化・共同開発など、グループ内の統合を進めて、グループとしての競争力を高めていけるかが重要となる。
こうした統合プロセスには負担が伴い、得られる効果の不確実性も高いため、アライアンスにとどめるケースも多いと考えられる。今後、「金利のある世界」における越境再編によって競争力を高める「好事例」が出てくれば、他の地銀においても越境再編を検討する動きが広がる可能性もあるだろう。


(注1)近年は、横浜銀行・神奈川銀行(2023年子会社化)、ふくおかFG・福岡中央銀行(2023年子会社化)、福井銀行・福邦銀行(2024年子会社化、2026年5月合併予定)、愛知銀行・中京銀行(2025年合併、あいち銀行)、青森銀行・みちのく銀行(2025年合併、青森みちのく銀行)、八十二銀行・長野銀行(2026年合併、八十二長野銀行)、千葉銀行・千葉興業銀行(2027年4月経営統合予定)など同一県内の再編が多くみられた。同一県内での再編が進み、同一県内での再編の選択肢が限られてきていることも、越境再編につながっている可能性がある。

(参考資料)
大嶋秀雄[2025].「地方銀行に求められる「攻め」の再編戦略」Economist Column No.2025-007(2025年4月25日)
大嶋秀雄[2020].「地方銀行に求められる再編戦略とは~地方創生と事業成長の好循環に向けた「地域×業務」の拡大~」日本総研Research Focus No.2020-027(2020年11月11日)


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