要約
- 地球温暖化問題はその置かれた立場によって判断基準が異なる「正解」のない課題ともいえるため、行政と企業が「1対1の関係」を構築するという従来の環境問題の解決のアプローチとは異なる関係性の確立が求められている。
- 現在、地球温暖化規制に関しては、企業内、業界内、業種間に意見相違が存在しており、その矛盾のために行政と企業は健全な関係を構築できずにいる。
- 企業内の意見相違とは、規制をリスクとみる部門とチャンスとみる部門との間に生じるものが代表的な例である。行政と企業の良好な関係性を構築すべく、環境部門を部門横断的な組織へと改編し、部門間の情報共有を密とする動きなどが見られる。
- 業界内の意見相違の代表的な事例は、企業による削減目標の達成度の違いなどに起因する「自主行動計画」へのコミットメントの差があげられる。既存の「業界」の枠組が機能しないなか、Japan-CLPなど「業界」の枠を超えた新たな企業連合の動きが見られる。
- 業種間の意見相違は、2国間オフセットメカニズムのクレジット所属に関するインフラやセットメーカーと素材・部品メーカーとの認識の差が代表例である。この意見相違を埋め合わせるような取り組みはいまだみられない。
- 行政・企業の双方とも、現在の地球温暖化問題について、幾つかの新たな動きが見られるものの手詰まりの状況にあり、上記のような意見相違の溝は遅々として埋まらない。これを打破するためには、旧来の「業界」の枠組に変わる「業界」に括りなおしたり、すべての業種・企業に対して一律の政策を執行するといった「公平」の考え方を改めたりするなど、抜本的な意識改革が必要である。これは行政と企業のコミュニケーションの在り方を再考することに他ならない。