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アジア・マンスリー 2021年5月号

中国景気はペースダウンも今後再加速へ

2021年04月28日 関辰一


中国の1~3月期の経済成長率は活動制限の強化や政府の過熱抑制策により鈍化した。もっとも、4~6月期には活動制限の緩和や輸出の増勢などに支えられて、再びペースを加速する見通しである。

■成長ペースが鈍化
中国では、1~3月期の実質GDP成長率が前期比+0.6%と前期の同+3.2%から鈍化するなど、景気回復がペースダウンした(前年同期比は+18.3%。

この背景として、まず活動制限の強化が指摘できる。本年入り後、新型コロナの新規感染者数が増加したため、政府は省・市・自治区をまたぐ移動を中心に活動制限を再度実施した。また、政府は春節に帰省を自粛するよう呼び掛けた。
この結果、人出は再び減り、2月前半の武漢、広州、上海の地下鉄乗客数は、それぞれ2020年1月前半の5割、6割、7割の水準へ減少した。

地方政府が地域商品券や地元観光地の入場券の配布など消費刺激策を講じたことで、活動制限による下押し圧力はある程度緩和されたものの、回復傾向にあった個人消費は1~2月にやや下振れした。

加えて、政府による不動産市場の過熱抑制策が一部で効果を発揮し始めたことも注目される。これまでは、コロナによる経済悪化に対応するための金融緩和を受けて、不動産開発企業による土地取得が急拡大したほか、不動産価格の高騰など、不動産市場でバブル的な状況がみられた。こうしたなか、政府は住宅購入規制の厳格化、不動産開発企業の資金調達条件の厳格化、住宅ローンの総量規制などの過熱抑制策を相次ぎ打ち出した。

この結果、本年入り後の不動産開発企業による土地取得は抑制され、コロナ前を下回る水準へ減少した。ただし、景気回復や低金利を背景に家計の住宅投資意欲は強く、住宅販売床面積はコロナ前を大きく上回る水準を維持している。3月の新築住宅価格は、主要70都市のうち上昇した都市数が62と前月から6都市増加するなど総じて上昇傾向が続いている。こうした状況を踏まえ、政府は住宅需要や不動産価格の抑制に向け、過熱抑制策をさらに強化している。

■再び回復加速へ
今後を展望すると、個人消費と輸出をけん引役に、景気回復ペースは堅調さを取り戻すと予想される。実際、3月の小売売上高が前月比+1.8%と大きく回復するなど、足元の個人消費は復調している。新型コロナの新規感染者数が低水準で推移するなか、政府は春節後に活動制限を緩和したため、人出はコロナ前とほぼ変わらない水準へ回復している。

先行き、政府の消費刺激策や雇用・所得環境の改善、積み上がった貯蓄の取り崩しなどにより、個人消費は順調な回復が続くと見込まれる。具体的には、政府は農村部における自動車や家電、家具の購入補助金を拡充すると表明し、地方政府も地場メーカーを対象にEV(電気自動車)の販促補助金を打ち出した。3月の失業率は5.3%とコロナ前の水準へ低下し、可処分所得は底打ちした。活動制限の緩和を勘案すれば、積み上がった貯蓄は今後、消費に向かうとみられる。

加えて、世界の情報通信機器の需要が引き続き拡大するほか、追加経済対策やワクチン接種の進展により米国経済が加速すると予想され、輸出の拡大傾向が続くことも景気支援材料となる見込みである。

もっとも、固定資産投資に関しては、過熱感がみられる分野を中心に、政府の抑制策を受けてスローダウンすると予想される。現在、資本財輸入が従来の拡大トレンドを大きく上回るペースで増加しているほか、与信の伸び率が経済成長率を上回るなど、設備投資や金融面に過熱感がみられる。

こうしたなか、政府は投資・与信を抑制する方針である。3月の全国人民代表大会(全人代)で、社会融資総量残高の対GDP比を前年から横ばいにコントロールすることを今年の目標に定めたほか、2021~25年の目標として第14次5カ年計画にも明記した。これを受けて、金融当局は3月、銀行に対して融資の厳格化を指示した。

以上のように、先行き設備投資の伸びは緩やかとなる一方で、個人消費と輸出の堅調な拡大が続く見込みである。今般、四半期のGDP統計が大幅に上方修正されたことも踏まえ、2021年の実質成長率は+9.0%と高めの成長が予想される。2022年は、消費と投資のバランスを考慮した政策誘導により、潜在成長率並みの+5.1%に落ち着くと見込まれる。
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