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JRIレビュー Vol.10,No.94

認可外保育施設の側面から保育制度の在り方を考える

2021年04月28日 池本美香


保育施設は、国の設置基準を満たし、地方自治体の認可を受け、公的な補助金を得ている「認可保育所」と、設置基準適合を要せず、自治体の認可・補助を受けていない「認可外保育施設」の大きく2形態がある。わが国は、急速に進む女性の労働市場参加とそれに伴う保育需要の増大に対応するため、認可保育所の増設を地方自治体に求めてきたものの、思うように進まず、認可外保育施設で賄われてきた経緯がある。認可保育所中心主義ともいうべきわが国の保育政策のもと、待機児童対策のバッファーとして機能してきたのが認可外保育施設である。本稿は、認可外保育施設から見える保育制度の問題点を指摘したのち、保育先進国として知られるニュージーランドの事例を参照しつつ、わが国の保育制度の在り方について考察を加える。

認可外保育施設を巡る近年の変化として、以下の3点があげられる。一つは、監査や補助金など行政の関与が拡大し、認可保育所と認可外保育施設の差が小さくなってきていることである。劣悪な保育環境で乳幼児の死亡が多発した1981年のベビーホテル(認可外保育施設の一形態)問題以降、指導監督基準の策定、都道府県への届出義務、年1回以上の立入調査の実施など、行政の関与が強まっている。待機児童の受け皿としての期待から、補助の充実も図られている。自治体が独自に補助する地方単独保育施策、国から認可並みの補助が出る企業主導型保育事業、幼児教育無償化など、多様な形で補助が行われるようになった。

二つ目は、それでもなお、認可外保育施設は、認可保育所に比べ要求されている基準や補助金に差があり、それが質に対する不安や利用者の経済的負担につながり、とりわけ保育需要の減少局面において、認可外保育施設が経営難に陥る可能性が高いと考えられることである。これは、保育全体の質低下になる。認可外のなかにも質の高い施設は多く、他方、認可保育所でも質の低い施設はある。しかし、認可は質が高く、認可外はそれに劣るという通念、および、利用者の経済的負担は実際に総じて認可の方が軽いことから、認可であるというだけで認可保育所のみが存続していくということになりかねない。

三つ目は、子どもや家庭のニーズに対応した多様で柔軟な保育を実践するために、あえて認可外保育施設を選択する動きである。認可保育所は、市町村から委託費を受け、利用者は市町村と利用契約を結ぶため、施設は子どもや親に向き合うより、市町村の方を向きがちである。保育のなかみも画一的になる傾向がある。それに対し、認可外保育施設は、利用者と施設との直接契約のもと、自然保育、異年齢の小規模保育、親協同保育など多様な実践がみられる。

こうした認可外保育施設の近年の変化を踏まえれば、待機児童対策のための認可保育所中心主義、そのバッファーとしての認可外保育施設という政策は改めるべきとの結論に至る。次のような視点に立ち、保育制度を再構築すべきであろう。

第1に、「待機児童対策」ではなく「子どもの権利」を保育制度の明確な理念とする。親が就労等で面倒をみられない子どもを対象に「預かり」という機能を提供するという旧来型の発想から、すべての子どもを対象に成長発達にふさわしい保育を受ける権利を付与するという発想へ転換する。

第2に、認可と認可外という区分をなくす。認可か認可外かで補助金に差がつくのではなく、子どもにとって良い保育か否かで差がつけられるべきである。今後、保育需要が減少に転じるなかで、バッファーと位置付けられている認可外保育施設は、たとえ良い保育を提供していても経営難に陥る可能性が高いが、そうした保育全体の質低下を防ぐ。

第3に、保育の質を高めるため、すべての保育施設に等しく監査を行い、その結果を公表する。併せて、親の参画を促す。監査にも限界があるうえ、親こそが保育の質に最も関心があり、日常的な観察や保育施設への提案が可能な立場にいる。より踏み込んだ参画の在り方として、利用者と保育施設との直接契約を原則とすることも検討されるべきであろう。

第4に、複雑な施設区分の廃止と所管省庁の一元化である。これにより、各方面に生じている事務負担を軽減する。目下与党内で検討されている子ども家庭庁の創設にあたっては、現行の保育制度のまま単に所管部署を一つにするのではなく、本稿で述べるような保育制度の見直しを踏まえ行われるべきであろう。
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