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リサーチ・フォーカス No.2020-016

コロナ禍で明らかになった子ども・子育て支援の課題-ニュージーランドとの比較をふまえて

2020年08月07日 池本美香


新型コロナウイルス感染症により、子どもや子育て家庭に様々な問題が生じている。本稿では乳幼児のいる家庭に焦点を当て、コロナ禍の状況を振り返るとともに、効果的なコロナ対策で注目されるニュージーランドの子ども・子育て支援の取り組みを紹介し、わが国の課題について考察する。

わが国では、3月初めより学校には休校が要請された一方、保育施設には原則開所が要請された。4月の緊急事態宣言下には、医療従事者等エッセンシャルワーカーの子ども以外は登園自粛が求められ、子育て支援施設や児童館、図書館、公園なども利用が制限された。登園自粛中の家庭の多くが保育施設から十分な支援が得られず、孤立し不安やストレスを抱え、子どもにも気になる行動面の変化が生じたことが調査で明らかになっている。

登園自粛中の家庭が保育施設から十分な支援を得られなかった背景には、保育施設が感染リスクを回避しつつエッセンシャルワーカーの子どもへの対応に追われたことはもちろん、認定こども園には内閣府、文部科学省、厚生労働省から大量の文書が届くなど、保育現場が混乱していたことがある。加えて親が就労等で「保育に欠ける」子どもを預かるという旧来型の保育観から、支援の必要性についての認識が希薄だったことがある。

これに対して、すべての保育施設を教育省が一元的に所管するニュージーランドでは、学校とともに保育施設も閉鎖され、休園に入る前から保育施設が各家庭を支援するという国の方針が共有されていた。保護者にも担任と連絡を取りながら子どもの過ごし方を考えることや、親同士がつながって過ごし方のヒントを得ることなども伝えられ、わが国のように乳幼児家庭が孤立や不安、ストレスに陥るリスクが軽減された。保育施設にも、国から配信されるメールによって、コロナ禍に何をすべきかがわかりやすく伝えられた。

ニュージーランドでは、休園・休校中の子ども向けに、国主導でテレビ番組が毎日放送されたほか、保護者や保育者に役立つ情報をまとめたホームページ(Learning from Home)も開設された。コロナ禍の子どもの心のケアが重要視されており、国はコロナ禍の子どものウェルビーイングに関して、保育者や教員、保護者向けに様々な情報発信を行っている。2010~11年のカンタベリー大地震の後、人々のメンタルヘルスに関する対応が進み、その知見がコロナ禍に活かされている。

ニュージーランドで強固な子ども・子育て支援体制が構築され、それがコロナ禍にも威力を発揮した背景には、30年以上も前に子どもの権利の実現に向けて調査や提言を行う子どもコミッショナーが設置されるなど、子どもの権利に対する意識が高いこと、加えて、国を構成する多様な民族に対するわかりやすい情報提供や双方向のコミュニケーションが重視されてきたことがある。

わが国の子ども・子育て支援の課題としては、第1に、「保育に欠ける」子どもを預かるという旧来の保育観から脱却し、すべての子どものウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)の保障に向けた支援への転換、第2に、保護者および保育施設に対する国からの情報提供の充実、第3に、親の働き方や住環境などコロナ禍に浮き彫りになった問題の改善に向けた検討、が挙げられる。

コロナ禍で明らかになった子ども・子育て支援の課題-ニュージーランドとの比較をふまえて(PDF:857KB)
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