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公的介護保険サービスにおける身元保証等に関する調査研究事業

2020年04月10日 岡元真希子沢村香苗


*本事業は、令和元年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 高齢化の進展と独居世帯等の「小さな世帯」の増加により、これまで多くの場合に家族が担ってきた身元保証、生活支援、死後事務(以下、身元保証等)といった機能を外部化する必要性が生じている。本調査研究は、身元保証等の支援ニーズがある高齢者に対し、現在どのような対応がなされているか、また中高年者がどのような準備状況にあるかを把握した上で、家族がいることを前提とした身元保証等の慣行の見直し、いかにニーズに対応し得るか、すべきかを明らかにすることを目的として実施した。

2.事業の主な内容
(1)高齢者の意思決定支援に関する事例調査
 親族等の「身元保証人」がいないために支援が難しかった高齢者の支援事例を把握した。分析にあたっては、支援の場面ごとに、課題の認識、選択肢の検討と意思決定支援、意思を踏まえた実行支援、実行後の評価という意思決定プロセスに分解して、支援の実態を整理した。
調査対象  事前に本調査の趣旨を説明することができた地方自治体、社会福祉協議会、居宅介護支援事業所、
      地域包括支援センター、医療機関、身元保証事業者、弁護士・司法書士、民生委員
調査方法  電子メール添付による送付、電子メール添付による回収
調査期間  2019年12月25日~2020年2月10日
有効回収数 24団体より、134事例
調査内容  支援対象者の基本情報、要介護度・認知機能・意思決定能力
      親族・その他の支援者(友人・知人、近隣住民)
      支援のきっかけ、支援が難しかった場面、支援の内容、連携機関   等

(2)中高年者の意思決定の準備状態に関する調査
 仮に入院・入所等の「身元保証人」を求められる状況になった場合に頼れる人がいるのか、あるいは意思決定支援を受けるにあたって、現時点での意思を支援者に伝達しているのか等についての実態を把握した。分析にあたっては、親族等の形式的な支援者、友人・知人などの身近な支援者との関係に着目した。
調査対象  全国の50歳以上の男女(男女・年代・婚姻状況別に抽出した)
調査方法  インターネット調査(調査委託先:GMOリサーチ株式会社)
調査期間  2020年2月14日~2020年2月24日
有効回収数 3,224件
調査内容  同居家族・親族との付き合い、友人・知人との関係、近隣との付き合い
      相談相手、治療やケアの意向に関する伝達の状況
      エンディングノート、遺言書の作成状況とその内容の伝達状況
      身元保証人を依頼できる相手   等

(3)学識経験者・現場有識者のワーキンググループによる検討
 介護・福祉、法律(身元保証)にかかる学識経験者と、高齢者福祉・エンディングサポートに携わる自治体職員、ケアマネジメントの専門職から構成するワーキンググループを組織し、全6回の検討を行った。うち3回は、医療機関のMSW、弁護士、司法書士というゲストスピーカーによる事例報告・現場知見を検討に役立てた。

3.調査研究事業の主要な成果
(1)高齢者の意思決定支援に関する事例調査
 134事例の分析にあたっては、
  場面① IADLの低下によって日常生活がそれまでのレベルで営めなくなる
  場面② 病気やケガに対処するため手術等の重大な医療処置を受ける
  場面③ 重大な医療処置が終了し、日常生活の再構築をはかる
  場面④ IADL・ADLの低下や病の進行に対応し、生活を見直す
  場面⑤ 死亡に対応する
の五つの場面に分類し、それぞれの事例を、意思決定のプロセスに沿って「課題認識・ニーズ顕在化」「課題解決策の設計」「解決策の遂行」「解決策の評価」で整理した。さらに、場面横断的に、本人、家族、専門職等、知人・隣人の関与という視点で考察を行った。
 その結果「本人自身が心身機能の低下の前に情報の整理や支援の基盤整備を行うための手段の充実」「意向や状況の情報取得にかかる本人・支援者の負担の軽減」「手続きや作業に関する支援者の無償労働の軽減」「本人に代わる意思決定の「主語」になりうる存在の選択肢拡大」「生存・死亡、入院中・入所・入居・在宅いずれの場合も利用できる、本人と支援者の持続可能な接点構築」が必要であると結論付けた。

(2)中高年者の意思決定の準備状態に関する調査
①「身元保証人」を引き受けてくれる親族等の支援者がいない人は一定割合いる
 50代以上の3.1%は、身元保証人の役割の一つである「入院手続きや、入院の際の緊急連絡先」を引き受けてくれる人が「誰もいない」および「わからない」という回答と合算すると、約7%の人は、入院にあたって病院から身元保証人を求められた場合に「この人に頼める」という相手が思い浮かばない状況にあるといえる。
② 親族と友人の両方がいる人、親族も友人もいない人に二極化している
 本調査に協力した50代以上の回答者の分布を元に算出すると、配偶者と実子のいずれもいない人は全体の13.9%、三親等内の親族がいない人は5.7%である。離別者の5人に1人、未婚者の4人に1人は三親等内の親族がいない。三親等内の親族がいない場合には、無縁仏になる可能性が高くなる。
 一人暮らしの人は同居家族からの支援が見込めない分、別居親族と密な付き合いをするかというとそういうわけではなく、同居者がいる人のほうが、連絡を取っている別居の親族の数も多い。同様に、親族からの支援を見込めない分、友人・知人とのつながりや近所づきあいなどで補完できるかというと、それも否である。全体では相談・話し相手となる友人がいないという人は約2割だが、三親等内の親族がいない人では友人がいない人が4割に上る。
③ 意思伝達についての不安はあるが、言わずとも分かってほしいと考えている
 「認知症になって物事が決められなくなること」などについて不安に思っている人は6割を超える。しかし、余命の告知に関する希望や、病院と自宅のどちらでケアを受けたいか、などといった意向について誰かに話したことがある人は約4割にとどまる。意向を誰にも話したことがないという割合が特に高いのは離別男性・未婚男性で、8割以上の人が誰にも話していない。その一方で、「自分の考えが伝えられなくなったときに、治療・ケアを受ける場所や財産の相続等について、あなたの希望と、家族や友人の考えが違うとき」には「私が望んでいたとおりにしてほしい」という人が4割、「私が望んでいたことを基本として、専門家と信頼できる家族や友人で相談して決めてほしい」が4割であり、自分の希望を尊重してほしいという気持ちは強い。「急に倒れてしまって自分で意思決定できない状態になった場合に、あなたの代わりに住むところや入院先等を決めたりしてくれる」と思われる人を一人だけ回答してもらったところ、男性の約7割、女性の約4割が、配偶者を挙げた。女性は、配偶者と並んで子を挙げている。意思決定・意思の伝達について不安はあるものの、自分の希望を誰かに伝えているわけではなく、それでいて自分の希望通りにしてほしい、という人が多数を占める。不安はあるがどうしてよいか分からない、配偶者や子であれば言わずとも察してほしいという姿が垣間見られる。
 余命の告知あるいは治療やケアについて、誰かに伝えている人は4割に注目してみると、伝えている場合には、多くは配偶者と子に対して伝えている。さらに配偶者・子に対しては、単に希望を伝えるだけではなく、自分自身が意思表示できなくなったときに、代わりに医療機関等に意思を伝えるように、すでに依頼をしているという人が約3割いる。「そのような状況になったら依頼できる」も含めると、9割の人は配偶者や子に意思の代弁を依頼できると考えている。

(3)二つの調査から得られた知見ならびに課題解決のための提案
 高齢者にとって、シームレスに意思決定を支援する家族がいなくなりつつある。家族が支援する場合は、高齢者の心身機能の低下に合わせて徐々に調整を行いながら合意形成することが可能だったが、課題に気づくのが遅くなり、深刻な状態に至ってから、専門職による支援が開始する事例が少なくない。一人の支援対象者に対して、ピンポイントの非連続的な接点が発生し、緊急性が高く時間的な余裕もないなかで、その場その場の解決策を模索せざるを得ない状況が増えている。つまり家族などの連続した接点がなくなったことによって、専門職が効率の悪い支援を行わなければならない状況が増えている。
 支援にあたって本人の意向に関する情報があることが、多くの場合に支援全体の方向付けとなり、支援者が確信を持って物事を進められるため有用であるが、エンディングノートや遺言書という形で意向を伝わる形にしている人は少数で、作成していても他者に置き場所等を知らせていないことも多かった。
 高齢期に機能低下をしながら、課題を察知して解決策を設計し、実行し続けるためには、「日常的な接点」「本人の意向や状態に関する情報」「接点と情報を使って意思決定を支援する主体」を設計することが必要である。
また、高齢者本人が積極的に、将来起こり得ることを考え、そのための手段を整えておくことは現段階でも可能であり、高齢者本人の予防行動を支援する仕組みが重要である。

公的介護保険サービスにおける身元保証等に関する調査研究事業 報告書(PDF:1,050KB)

公的介護保険サービスにおける身元保証等に関する調査研究事業報告書 参考資料(PDF:280KB)



本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター マネジャー 岡元真希子
TEL: 03-6833-1575   E-mail: okamoto.makiko@jri.co.jp
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