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アジア・マンスリー 2020年4月号

東南アジアのスタートアップと日本企業の連携

2020年03月26日 岩崎薫里


東南アジアでは、日本企業が市場開拓や最新技術の獲得のために現地のスタートアップと連携する事例が相次いでいる。連携に動く日本企業の顔ぶれも、当初の新興企業中心から伝統的な大企業へと拡大している。

日本企業が相次ぎ東南アジアのスタートアップと連携
日本企業の東南アジアでの連携先としては従来、現地の財閥を中心とする大企業が多かった。しかし近年、東南アジアでのスタートアップの台頭に伴い、連携先としてスタートアップを選択する日本企業が増えている。2010年以降の日本企業と東南アジアのスタートアップとの主な連携事例73件を整理すると、2018年と2019年が合計で5割を占め、ここ数年で急速に活発化していることが確認できる。

分野別では、当初はEC(電子商取引)分野が中心であったが、2017年頃には、東南アジアでECサイト運営への新規参入がほぼ一巡した影響からか、連携の動きは一服した。その一方で、フィンテック分野での連携は根強く続いている。その理由の一つとして、東南アジアでは銀行口座保有率が低いなど金融課題が多いことから、この分野でスタートアップが活躍するチャンスもいまだ多いとの判断が日本企業側で働いているのであろう。

ここにきて急増しているのが、それ以前はほとんどみることのなかった最新デジタル技術およびモビリティ分野での連携である。最新デジタル分野では、ブロックチェーン、ビッグデータ分析、RPA(コンピューター上で行われる業務プロセスの自動化)関連のスタートアップとの連携が目立つ。同じスタートアップが複数の日本企業と連携しており、しかもスタートアップのほとんどはシンガポールを本社としている。そのなかにはインド出身者が設立したものが少なくない。一方、モビリティ分野では、配車サービスを提供する巨大スタートアップ2社との提携がほとんどを占めていている。

東南アジアのスタートアップとの連携に動いている日本企業の顔ぶれにも変化がみられる。当初はEC分野を中心に新興企業が多く、東南アジアでのスタートアップの盛り上がりに新興企業がいち早く反応した形となっていた。その後、スタートアップの手掛ける業種が広がったことに加えて、ユニコーン(推定評価額が10億ドル以上の未上場企業)が続々と誕生したことなどにより、そうした企業群の認知度が高まるにつれて、伝統的な大企業も連携に加わるようになった。

連携目的は二つ
日本企業は何を目的に東南アジアのスタートアップと連携しているのであろうか。連携を行った日本企業53社のニュースリリースなどからまとめると、「東南アジア市場の新規開拓・事業強化」目的が55%、「最新技術の獲得・新しいトレンドへの対応」目的が45%と拮抗していた。

一つ目の「東南アジア市場の新規開拓・事業強化」とは具体的には、東南アジアでECやフィンテックなどデジタル関連のスタートアップが次々と登場するなか、日本の同業者がそうしたスタートアップを足掛かりに東南アジアに進出したり、既存事業を強化したりすることである。日本と東南アジアとでは事業環境が異なるため、スタートアップの知見や保有データを活用したいとの日本企業側の思惑もある。

二つ目の「最新技術の獲得・新しいトレンドへの対応」に関しては、現在、最新のデジタル技術を活用した事業や、シェアリング・エコノミーといった新しい概念に基づく事業が世界中で登場している。日本企業は、そうした事業の主要な担い手であるスタートアップと連携することで、彼らが有する知見や技術を吸収しようとしている。従来、そうしたスタートアップはアメリカ発が多かったものの、その後、中国発やイスラエル発、そして最近になって東南アジア発も出てきていることから、日本企業も東南アジアでの連携に動いている。

スタートアップをいかに支援できるかが重要に
日本企業が連携先のスタートアップを探し出す方法としては、大きく分けて自力での探索と外部への委託の2通りがある。連携先を自力で探すには、東南アジア現地法人の従業員が現地のスタートアップ・イベントにこまめに参加したり自らスタートアップ・イベントを開催する、あるいはスタートアップ創業者およびその周辺組織の関係者と親密になるなどしてスタートアップ・コミュニティに入り込む、などの方法がある。一方、連携先スタートアップの探索を外部に委託する場合は、①東南アジアのスタートアップに投資するベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナー(有限責任組合員)になって、ベンチャーキャピタル経由で情報を収集する、②調査会社などから情報を収集する、③日本企業と東南アジアのスタートアップとのマッチング・サービスを利用する、などがある。

東南アジアのスタートアップの将来性には世界中が注目しており、有望なスタートアップであれば引く手あまたな状況にある。米国のシリコンバレーでは、企業とスタートアップとの連携において主導権はスタートアップ側にあり、企業がスタートアップを選ぶのではなく、スタートアップが企業を選ぶといわれているが、東南アジアでも有望先に限ればそのような状況になりつつある。スタートアップが連携先を選定する大きな基準項目は、自社の成長に貢献してくれるか否かである。日本企業が強みをもつ支援方法としては、①自社が保有する技術の提供、②自社が保有する販売などのネットワークの提供、③日本への進出支援、などが考えられる。連携先として日本企業が選ばれるためには、そうした独自の強みを活用しながらスタートアップの成長をいかに支援できるかがポイントとなろう。
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