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JRIレビュー Vol.10,No.71

【特集 外国人材の望ましい受け入れに向けて】
1章 急増する外国人労働者とどう向き合うか-望ましい受け入れの条件

2019年11月28日 山田久


わが国は、フローでみればすでに「外国人労働者受け入れ大国」というべき状況にある。2017年には前年比19.5万人増え、労働力全体の増加分の約3割が外国人によって占められた形である。国際比較をしても、外国人居住者の受け入れ数(2017年)は、データの取れるOECD諸国のうち、ドイツ、アメリカ、イギリスについで第4位にランクされている。

外国人労働者はわが国産業にとって必要不可欠な存在になっている。地域別に主な産業ごとの外国人労働者比率(2018年度)を算出すると、飲食・宿泊では南関東で9.2%に達しており、東海も3.8%と高めである。そのほか製造業では東海の6.3%を筆頭に、四国、中国で4.8%となり、商業で南関東が3.3%と高くなっている。

わが国では、専門的技術的分野以外での外国人労働者の受け入れは行わないとしながらも、実態的には日系人や技能実習生、留学生のアルバイトの形で、企業の労働需要の高まりに応じて、未熟練の外国人労働力を受け入れてきた。これまでの国内労働需給と外国人労働者の増加ペースの関係を前提にシミュレーションを行うと、2030年の外国人労働者数は280~390万人に達し、外国人労働者比率も5~6%前後になるとの姿が示される。このとき、南関東の飲食・宿泊では4~5人に一人、東海の製造業では6~8人に一人の割合で外国人が働く状況になると考えられる。

外国人労働者が増えることの経済社会への影響にはプラス面・マイナス面の両方がある。メリットとしては、①労働力不足を緩和すること、②人口減少地域の存続を可能にすること、③外国人ならではの視点や海外とのつながりが新たに生まれること、がある。一方、デメリットとしては、①単純労働力の増加は賃金上昇を抑え、国内労働者の処遇改善を妨げること、②国内産業の生産性向上の阻害要因となること、③地域住民とのトラブルが増え外国人へのマイナスイメージが強まるリスクがあること、を指摘できる。

以上のメリット・デメリットは表裏一体の関係にあるが、現状では緩やかでも賃金が上昇し、生産性も持ち直しの傾向がみられるなか、総じてみればこれまでのところメリットが上回っているように思われる。しかし、わが国では制度と実態が乖離する形で、いわばなし崩し的に外国人労働者を受け入れてきており、現状の延長線上では、今後、外国人労働者が増えていくにつれて、デメリットが大きくなっていく恐れがある。

政府は2019年4月に入管法を改正し、新たな在留資格(「特定技能」)を創設した。加えて、法務省の外局として「出入国在留管理庁」を設置したほか、「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」が策定されている。新しい在留資格は、技能実習制度や資格外活動(留学生アルバイト)の対象である未熟練労働者と高度外国人の間を埋める「中レベル技能労働者」のカテゴリーを認めるとともに、外国人労働者の生活者としての面への対応をそれなりに整備するというものである。人手不足対策としての外国人労働力の受け入れにようやく正面から向き始めたものと評価できるだろう。

もっとも、改革はこれからといってよい。今回の見直しを皮切りに在留資格体系全体を再構築していくべきであり、「短期就労・滞在」―「中期就労・滞在」―「長期就労・滞在」を一連のものとして捉え、既存在留資格を各々どこに位置付けるかを明確にする必要がある。同時に、資格間の移行の条件を明示することで、外国人が将来への展望を持ちながら徐々に日本社会に溶け込んでいける仕組みを整備することが求められる。加えて、受け入れペース制御の仕組みの導入が必要で、地域の産業ビジョンと調整しつつ、地域別・産業別受け入れ上限を決定していくことが望ましい。さらに、適切な外国人受け入れを推進していくための、入国管理・雇用管理・生活支援の全般にわたる一貫した体制整備を進めるべきであり、外国人と地域住民の共生を実効ある形で進めていくための枠組み作りも急がれる。
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