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JRIレビュー Vol.10,No.71

【特集 外国人材の望ましい受け入れに向けて】
4章 外国人雇用増加の産業面への影響-総じて産業基盤維持に貢献も、一部で生産性を下押し

2019年11月28日 山田久


深刻な人手不足への対応から、外国人雇用がハイペースで増加しているが、その受け入れについてはメリット・デメリットの両面がある。メリットとしては、不足している労働力を充足し、事業の継続を可能にして日本人労働者の雇用維持にもつながることがあげられる。顧客にとっても便利なサービスが享受できる状況が維持される。一方、デメリットは、労働生産性の低迷や賃金の伸び悩みが指摘できる。本稿では、産業別・地域別のデータを用いて実態把握を行い、外国人雇用増加のわが国産業や雇用環境への影響について分析を行った。

外国人労働力の活用状況は、地域別・産業別に大きなばらつきがあるものの、全体としてみれば、これまでのところ外国人労働力の活用は人手不足を緩和して地域の産業基盤や顧客サービスの維持に貢献し、経済的にはプラスに作用しているとみられる。もっとも、一部分野では生産性や賃金に対してマイナスに影響しはじめている可能性が指摘できる。そこには、低コスト労働力の存在が設備投資や業界再編といった構造改革・経営革新を遅らせ、低コスト労働力としての外国人労働力への更なる依存をもたらすという構図が窺われる。

わが国企業にとっては生産性にマイナスにならない範囲で労働力不足の緩和をもたらし、アジア地域を中心とした外国人には日本のビジネススキルを習得できるという「ウィン・ウィン関係」となる限り、外国人労働力の活用は前向きに捉えることができる。もっとも、本稿での分析は、一部で、外国人雇用の増加が生産性低迷など望ましくない状況を生み出している可能性を示唆している。各企業・産業にとって、生産性向上と両立できる外国人労働力活用となっているか、再検討することが求められる局面に入っているといえよう。

今後、個々の企業が外国人活用にどういった態度で臨むべきかについて、出発点となるべきは、受け入れる外国人を「人」として見るという当たり前のことである。外国人材活用の真の意義はコスト削減ではなく海外向け事業の拡大にこそあり、それは、コスト削減のための安価な労働力ではなく、事業拡大のための有能な人材として外国人を捉えるべきことを意味している。具体的には、①なぜ外国人か、どのような役割を担ってもらうか、を明確化する、②外国人を「成長する人材」として、長く働いてもらうことを前提にする、③外国人が日本社会に溶け込めるよう、生活面の支援を重視する、④日本人の活用と同時に進める、⑤日本人の意識や働き方を同時に変えていく、の5点を考慮することが外国人材戦力化のための要諦といえる。
4章 外国人雇用増加の産業面への影響-総じて産業基盤維持に貢献も、一部で生産性を下押し(PDF:1971KB)
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