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ビューポイント No.2026-023

歴史的・構造的な観点からみた円相場 ~円安トレンドは長期化する可能性

2026年09月24日 石川智久


ドル円相場は、短期的には日米金融政策や金利差、為替介入を巡る思惑に左右されるため円高にも円安にも触れるもの。もっとも、中長期的視点で見ると、1970 年代から長く続いた円高基調が終焉し、アベノミクス以降は円安基調に転換。今後を展望しても、円安が長期化する可能性が高まっている。

歴史的な観点から明治期以降の超長期の通貨価値の推移を振りかえると、明治期から戦前までは、1ドル=1円で出発したが、総じて円安傾向にあり、第二次世界大戦直前には1ドル=4~5円であった。戦後は、1ドル=360円の固定相場からスタートし、1970年代に変動相場制へ移行。2011年には1ドル=75円に。すなわち、円の価値は、戦前は約70年で円は約4~5分の1に減価し、戦後は敗戦による大幅な切り下げの後、約70年で4~5倍に増価したという歴史を辿っている。そして2012年のアベノミクス開始以降は、足元まで円安傾向が持続している状況。

現在の円相場は、実質実効為替レートで見て約半世紀ぶりの低水準。また、購買力平価ベースでみると、理論値としては 70~100 円が妥当であるものの、それよりも大幅に円安となっている状況。戦後から2020年まで、実勢相場は購買力平価対比で円高方向に位置する局面が多く、消費者物価ベースの購買力平価は円安局面における一種の抵抗線として機能してきた。しかし、2020 年以降はこの関係が崩れつつあり、購買力平価を上回る円安が常態化している。

円相場の今後を展望すると、日銀は金融引き締め姿勢を強めており、円安傾向は短期的には一服するとみられる。もっとも、中長期的には、デジタル関連サービス収支の赤字拡大、海外証券・直接投資の収益の国内還流の弱さ(現地での再投資)、自然災害を背景にした再保険料や外国人労働者の仕送り等による第二次所得収支の赤字拡大、トランプ関税をめぐる交渉過程で約束した対米投資5,500億ドルのドル需要、などが円安圧力として作用する見込みである。一方、インバウンド収入の拡大は円高要因となり得るものの、供給制約を踏まえれば円相場を下支えする効果には限界がある。また、国際基軸通貨ドルの信認の揺らぎも円相場の先行きに不透明感を与えている状況。

企業や政府においては、「今後も長期的なトレンドは円安」となる可能性を踏まえて戦略を立案することが重要。もっとも、通貨はその国の国力を示すバロメーターでもある。一方的な円安には歯止めを掛けるよう、輸出力強化や対内投資増加を狙った構造改革を進めることで、円の価値を高める努力をしていくべきである。過度な円安も円高も日本経済に不利益をもたらす。通貨価値の安定に向けて、財政政策、成長戦略、金融政策すべてをうまく連携させていく必要があるだろう。

近年、経済環境は大きく変化しており、必ずしも過去と同じことが起きるものではないが、「歴史は繰り返さないが韻を踏む」とも言う。世界経済がトランプ関税等で劇的に変化するなか、通貨政策や為替戦略を考える上では、歴史から謙虚に学び、長期的な視点を持つことが求められていると言えよう。


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