■石破首相が辞任を表明
石破首相が昨日辞任を表明した。今後次期政権について様々な動きや加速するが、わが国では多くの課題が山積するなか、政治空白は許されず、速やかに政策実行能力が高い政権が誕生することが望まれる。経済政策については、次のような政策課題に取り組む政権となることを期待したい。
■米関税対応、地方創生、経済成長と財政再建の両立、外国人労働者政策が喫緊の課題
1点目は、トランプ関税への対応である。トランプ米大統領が日米関税合意を巡る大統領令に署名したことで、自動車関税の引き下げなどにメドがついたが、5500億ドルの投資枠についてはまだ不透明な部分も大きい。この部分についてわが国にとって利益となるように交渉していくことが求められる。
2点目は、地方創生である。石破政権では、「稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生」という方向性が示された。これまでのような補助金のバラマキではなく、地方に新産業を生み出そうとした点は評価できよう。次期政権においても、産業政策と絡めて地方創生を進めることで、地方で賃金の高い雇用を生み出していくことが重要である。
3点目が、経済成長と財政再建の両立である。参議院選では、与野党ともにバラマキ色の強い政策が公約となっていた。しかしながら、足元で長期金利が上昇していることに見られるように、わが国の財政の先行きに対して、市場は疑心暗鬼となっている。久方ぶりに「金利のある世界」となるなか、今後わが国政府部門の利払い費は急増していくことが見込まれている。社会保障制度改革などを通じて財政再建に歩みを進めていくことが期待される。
4点目が、外国人労働者政策である。参議院選挙では大きな争点となったが、現在までのところ国民的な合意には至っていない。欧米の移民を巡る混乱等を他山の石とすれば、なし崩し的な外国人受け入れ拡大は回避すべきであり、日本語力等を含めた日本への適合度が高い人材に絞って、徐々に受け入れていくことが望ましい。社会の根幹をなす日本人の多くにとって納得感のある外国人政策パッケージを作成し、国家分断を回避するようにすべきである。
■構造改革にも歩みを進めよ
先般当社は、筆者を含む4名の連名で、政策提言ペーパーを発信した。詳細は下記参考文献を参照されたいが、このペーパーでは、わが国にとって必要な構造改革について提言している。具体的に言えば、①経済政策については、供給力強化とそれを通じた経済安保の確立、②財政政策については、市場からの信認維持と現役世代の負担軽減、③エネルギーについては、経済安保に向けた「山の資源」倍増と「海の資源」ギアアップ、④地方創生については、行政区画にとらわれない水平連携・垂直補完を提言している。
当社は、市民や自治体、企業、国などの各主体が「自律」しながら、ビジョンや目標を共有し「協生」する「自律協生社会」を提唱しているが、次期政権において、これらの政策を通して、自律協生社会の実現に歩みを進めることを期待したい。
<参考文献>
石川智久、西岡慎一、蜂屋勝弘、瀧口信一郎、山崎新太.【2025】.「【参院選を受けた政策提言】国際秩序の変化と人口減少時代に対応可能な自立した国家を目指して

日本総合研究所 ビューポイント No.2025-015
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