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リサーチ・フォーカス No.2025-021

製造業の雇用調整を成長の起点に ― 産業集積の再構築で経済の活性化を ―

2025年06月19日 西岡慎一藤本一輝


わが国では製造業の生産活動が縮小しており、雇用調整圧力が強まっている。就業者数は減少に転じており、製造業の雇用失業率も上昇している。その背景には、グローバルな財需要が低迷するなかで、わが国の国際競争力が低下しており、生産拠点の再編・閉鎖が進んでいることがある。今後、米国の高関税政策が長期化すると、米国への生産移転や中小部品メーカーの販路喪失が深刻化する恐れがある。過去の雇用調整パターンを踏まえると、米関税の影響だけでも5年後には製造業に60万人規模の雇用調整圧力が生じうる。これはリーマンショック時に次ぐ規模である。

現在の日本では、非製造業の人手不足や転職市場の発達により、リーマンショック時のような全国的・全世代的な雇用悪化は回避される可能性が高い。しかし、製造業が集積する地方圏では、中高年層の失職や若年層の都市圏への流出が加速し、地元経済がさらに停滞しかねない。また、製造業の集積が一段と低下することで企業間の連携や技術の伝播が損なわれ、生産性が下がる可能性もある。仮に、60万人規模の雇用調整が生じると、集積の低下が製造業の生産性を1.3%押し下げると試算され、所得や競争力などに影響が及ぶ。

こうした製造業の縮小は、逆説的に日本経済の構造を刷新する新たな契機ともなり得る。製造業はデジタル技術やロボット技術の導入を通じて、生産性と付加価値の向上に取り組み、成長エンジンとして再構築を図ることが求められる。生産拠点の戦略的な再配置を進め、集積効果を最大限に引き出すことも重要である。政府においても、労働移動や産業集積への取り組みが不可欠となる。半導体や再エネなどの分野では新たな集積の芽が生まれつつあり、自治体、大学、金融機関などと連携した一段の取り組みが求められる。また、高付加価値サービス業の充実などにより地方中核都市が首都圏の補完軸として成長できる環境を整えることも重要である。


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