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リサーチ・フォーカス No.2025-015

トランプ関税が阻害する賃上げ機運 ― 製造業6兆円の減益で賃上げ率は2%へ減速も ―

2025年05月28日 藤本一輝西岡慎一


トランプ政権による関税引き上げは日本の製造業に深刻な打撃を及ぼす可能性がある。これまで米国向け輸出の増加が製造業の業績を支えてきたが、新たな関税措置により、その重要な収益源が失われかねない。

関税引き上げは対米輸出の減少を通じて輸出企業の収益を悪化させる。試算によれば、すでに実施されている関税に加えて相互関税の上乗せ分も発動される場合、対米輸出金額は年4~6兆円減少し、企業収益は最大で25%下押しされる。日本の輸出は代替が難しい機械製品が中心であり価格弾力性はそれほど大きくないが、企業が輸出価格を引き下げて関税コストを吸収せざるを得ない場合、強い減益圧力を受ける。また、機械製品は政策不確実性の影響を受けやすいことも、輸出を大きく下押しする要因となる。

こうした輸出の減少は賃金にも波及する。試算では、相互関税の上乗せ分が発動された場合、製造業の賃金上昇率は2026 年に2.0~2.4%へと鈍化し、足元の3%台から大きく低下する可能性がある。とくに製造業が集積する北関東、北陸、東海といった地域では、関連サービス業を含めた地域全体で賃金抑制圧力が強まる懸念がある。

このような貿易環境の変化を踏まえ、企業には米国市場への過度な依存から脱し、成長が見込まれる地域市場への展開を加速させる戦略が求められる。さらに、国際競争環境の変化も踏まえ、たとえば、対中関税の引き上げにより、中国製品の代替として日本製品が選択される可能性を捉え、供給網と販売網の再構築による中長期的な競争力強化が不可欠となる。


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