リサーチ・アイ No.2025-004
トランプ関税でグローバル景気は後退局面に― 相互関税などで米インフレ率+2.3%上振れ、世界成長率▲1.1%下振れ ―
米国政府は、かねてより予告していた相互関税の詳細を発表。すべての国に対して10%の追加関税を課した上で、とくに対米貿易黒字の大きな国については、相手国の対米関税率や非関税障壁(規制、税制、為替政策など)を総合的に勘案し、個別に上乗せ関税率を設定。
相互関税を含め、現在公表されている関税引き上げがすべて実施された場合、米国の景気は大きく悪化する見通し。試算によれば、米国では、平均関税率が25.8%に跳ね上がることで、インフレ率は+2.3%ポイント上振れ。物価上昇により利上げが実施され、長期金利は+1.9%上昇。物価や金利の上昇で経済成長率は▲0.9%ポイント低下。
さらに、関税賦課はグローバルな景気後退を招来。相互関税を含め現在公表されている多くの関税引き上げが実施される場合、対米輸出の減少などを通じて、世界全体の成長率は▲1.1%ポイント下振れ。3%前半と見込まれる今年の世界成長率が2%近傍に落ち込む計算。国・地域別では、中国、EU、日本の成長率が▲1%程度押し下げられるほか、対米輸出依存度の高いアジア諸国に大きな下押し圧力がかかる見通し。さらに、各国が報復関税で対抗すれば、世界経済への下押し効果は一層増大するおそれも。
今後、米国は相手国との交渉次第で関税率を引き下げる可能性もある一方、さらなる関税発動にも含みを持たせている状況。貿易収支の動向次第では、一段の関税引き上げも否定できない点に要注意。
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