JRIレビュー Vol.1,No.119
日本経済見通し
2024年12月25日 藤山光雄、後藤俊平、藤本一輝
足元の日本経済は一部で足踏みがみられるものの、総じて緩やかに回復している。先行きの日本経済も緩やかな回復が続くと予想する。業種別にみると、非製造業の好調が続き、景気をけん引する見通しである。インバウンド需要の拡大や企業によるデジタル化に向けた取り組みが、関連するサービス産業の業績を押し上げる。加えて、所得環境の改善により個人消費が回復することも、小売や外食などの個人向けサービスの経済活動を押し上げると見込む。デジタル化の進展などが労働生産性を向上させ、実質賃金の持続的な上昇に寄与するとみる。
一方、製造業の生産活動は力強さを欠くと予想する。生成AI需要の拡大などを受けて情報関連財への需要は回復しているものの、多くの業種で中国市場での苦戦が続くと見込まれる。この背景として、中国の内需の弱さや中国企業の競争力向上などが挙げられる。加えて、アメリカのトランプ次期政権による対中関税の引き上げなどで中国経済が打撃を受け、製造業の減収圧力が強まる恐れもある。
さらに、アメリカ政府がわが国を含む多くの国に関税を課す場合などには、景気が想定以上に下振れるリスクがある。こうしたケースに備え、わが国企業は今後成長が見込まれるグローバルサウスへの進出を図るなど、多角的に外需を取り込む姿勢などが重要となる。
人手不足の深刻化もわが国の経済活動を阻害するリスクとなる。喫緊の課題として、政府には「年収の壁」の解消に向けて関連制度を見直すことが求められる。加えて、中小企業などでは、デジタル化・DXを通じて生産性を向上させることが急務となる。
わが国経済は、「金利ある世界」を迎えつつあり、危機対応時の財政運営を平時に戻し、財政の健全化を目指すべき時期にある。政府は、的を絞った支援策やEBPMの徹底などを通じて、効果的・効率的な財政運営に取り組むことが求められる。
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