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リサーチ・フォーカス No.2024-058

トランプ政策が助長する中国の「デフレ輸出」 ― 競争力増す中国産業がわが国製造業を圧迫 ―

2024年12月23日 藤本一輝西岡慎一


米国では、トランプ次期政権が積極的に関税を引き上げる構えである。米国が関税の賦課で海外製品を締め出すと、世界的に需給バランスが崩れ、米国の外で過剰生産や過当競争が引き起こされる可能性がある。その場合、生産調整や価格下落を通じてグローバル企業の収益が悪化し、世界経済の成長力が低下する恐れがある。

すでに過剰生産に陥る中国では、企業が安価な製品の輸出攻勢を強める「デフレ輸出」が増加している。この背景にあるのは、中国の内需低迷を受けて余剰となった製品を輸出に振り向ける動きのほか、中国企業の国際競争力が向上していることが挙げられる。中国では政府による製造業強化策が奏功し、機械関連の中間財・資本財といった高付加価値分野で優位性が強まっている。

中国の内需低迷や競争力向上を受けて、先進国の製造業が打撃を受けている。中国国内では価格競争が激化しており、日本やドイツなどの中国向け輸出が減少しているほか、日系企業の中国現地法人でも業績が悪化している。

仮に、米国政府が中国への圧力を強める場合、中国需要の落ち込みを通じて、わが国製造業の業況が一段と悪化する恐れがある。また、中国企業が対米輸出の減少で生じた余剰製品を他国に振り向けることで、わが国にも衣類・家電などの安価な消費財が中国から大量に流入し、競合する国内メーカーへの打撃となる可能性がある。中国政府が、局面打開に向けて電気自動車(EV)や太陽光パネルなどの戦略分野に一段とテコ入れし、対中競争がさらに強まる可能性もある。

こうした事態に備え、わが国企業においては、中国市場での成長機会を引き続き探りつつも、新たな成長市場に積極的にアプローチすることで収益源の多角化を進める必要がある。水素エネルギーや蓄電池など、今後成長が期待される分野の競争力を強化する取り組みなども重要となる。


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