ビューポイント No.2024-023 外国人労働者政策を考えるポイント-「欧米の失敗」から何を学ぶか- 2024年11月22日 石川智久、後藤俊平現在、世界的に移民や外国人労働者に対する関心が高まっている。先進国では全人口に占める移民の割合はこの 60 年で7%前後から約 10%にまで増えている。こうしたなか、先進国では移民が自国に与える影響について論争が激化している。経済学的にみると、マクロ経済面ではプラスとするものが多い一方、ミクロでみると、移民が就業するのと同じ仕事をしている人には不利益があるなど、様々な弊害が指摘されている。また、マクロ経済で大きなプラスがあったとしても、政治的なリスクも大きいという意見もある。こうしたなか、世界銀行は外国人労働者の受け入れについて、その国にうまく対応できる適合性と、その国に貢献したいという動機のマトリックスで考えることを提案しており、受け入れにはかなり細かい政策対応が必要であることを示唆している。欧米の動向をみると、これまで移民の受け入れに寛容であったが、足元では状況が変化している。例えば、米国のトランプ大統領選出、欧州における極右政党躍進の背景には、外国人労働者に対する目線が厳しくなってきていることが指摘可能。こうしたなか、OECD 諸国では移民受け入れを選択的・限定的にする方向に。わが国では、既に人口の3%程度の外国人が居住しており、OECD 平均よりは低いものの、2070 年には 10%近くになるという予測もある。こうしたなか、外国人労働者への対応について、時間的に余裕がある間に課題解決を進めることが重要である。具体的な課題としては、①出入国在留管理庁やその他の官庁間の横ぐしが通っていない、②日本に適合性・動機が高い人材を十分に誘致できていない、③既に日本に滞在している外国人との統合政策が道半ばといったことが指摘できる。欧米の変化とわが国の課題からは(1)外国人政策の司令塔の設置と総合的・戦略的な施策の立案、(2)日本就職の適合性・動機の高い人材の受け入れ、(3)社会的統合政策の推進、(4)自国民に納得感のある不法移民への対応、等が重要である。わが国では、人手不足が深刻化するなか、受け入れ態勢が未整備なまま、なし崩し的に外国人労働者が増加している。これは、日本人にとっても、外国人にとっても不幸な状況である。両者が安心して生活をするためには、まずは体制整備が必要であり、それを怠っては、欧米のように国家分断を招くリスクがあることは十分留意すべきである。拙速となることなく、十分に制度的な対応を行いながら、日本人・外国人双方が納得できるように丁寧に進めるべき話である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)